横笛 その二十七

 夕霧は光源氏と東の対に来たので、二人はそこでゆっくりと話などをするうちに、日も暮れかかってきた。


 昨夜、あの一条の宮を訪ねた時のあちらの様子などを伝えると、光源氏は微笑んで聞く。


 柏木在世中のしみじみした思い出話や自身に関わりのある話の節々には適当な相槌など打つが、



「その女二の宮が想夫恋を弾かれたお気持ちはいかにも昔話の例として後世まで借り伝えたいような風雅な話だが、やはり何といっても女というものは男心を思わず動かすような教養や趣味があったとしても滅多にそれを人に見せるべきではないということを思い知らされることがあれこれと多いものだね。あなたにしても亡くなられた人との友情を忘れず、こうしていつまでも親切にお世話したいという気持ちをあちらにわかってもらっている以上はどうせなら潔白な気持ちでお付き合いして、何かと面倒なことに関わったり、世間によくある面白くない間違いを起こしたりしないよう、気をつけたほうがいい。それがお互いにとっても奥ゆかしいし、無難なことだと思う」



 と言うのだった。

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