若菜 その二七六
「まあ、大変なこと、あの人も光源氏様をとても怖がり、憚っていらっしゃってほんの少しでもこのことが光源氏様のお耳に入るようなことがあってはとすっかり怖れ脅えていましたのに、はやもうこんなことが起こってしまったではありませんか。だいたい女三の宮さまがいつまでも子供っぽく他愛もない性分であの人にもうっかり姿を見られてしまったのがっことの起こりです。あれ以来ずっと柏木さまは女三の宮様に恋焦がれて私が手引きをしないと言っても恨み言を言い続けましたけれど、まさかこうまで深い仲になろうとは思いもよりませんでした。どなたのためにも困ったことになりました」
と遠慮なくずけずけ言う。
女三の宮は気の置けない初々しいところがあるので、小侍従はつい気安く思い、無遠慮になっているのだろう。
女三の宮は園児もしないでただもう泣きむせぶばかりだ。本当に気分も悪そうでほんのわずかの食事も食べないので、女房たちは、
「これほどお加減をわるくしていらっしゃるのに、光源氏様は見捨てておきになられて今はもうすっかり全快になられた紫の上のお世話ばかりを何と熱心になさいますこと」
と恨みがましく思い、話しているのだった。
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