若菜 その二二一
「女三の宮のお琴は大層上手になられたものですね。どうでしたか、あのお琴は」
と聞くと、紫の上は、
「初めの頃、あちらでちらとお聞きした折にはどうんなものかと危ぶまれましたけれど、今ではすっかりお上手になられましたね。だって当り前ですわ。あなたがこんなに熱心に教えておあげになっているのですもの」
と答える。
「そう、そう。毎日手を取って教えている頼もしい師匠だものね。琴はむつかしくて面倒なものだし、稽古に時間のとられるものだから他のどなたにも教えてあげなかったのだけれど、朱雀院も帝も、
『それにしても琴だけは女三の宮に教えて差し上げているだろう』
と仰せられていると漏れ聞いたので、申し訳なくいくら何でもそれぐらいのことをさせていただかなくては、こうしてせっかく特別に宮をお預かりして後見役を引き受けた甲斐もないわけだと思い立って教えたのです」
と話すのだった。
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