若菜 その一七四

 継母としての立場からも玉鬘は真木柱の世話をできるだけしてやる。また、蛍兵部の宮のこうした冷たい態度にも気づかないふりをして、真木柱の弟たちをいかにも親しそうに側に置いたりしているので、蛍兵部の宮も気を遣って、すっかり真木柱の縁を切るようなつもりはないのだった。


 ところが例の北の方という根性曲がりの人がいつもちょっとしたことも許さず、口やかましく恨む。



「親王たちと結婚させれば蛍兵部の宮なら鷹揚で浮気もせず、一筋に姫だけを愛してくださるだろうから、生活は華やかでない代わりに、気苦労もないだろうと思っていたのに」



 と文句を言うので、蛍兵部の宮も自然耳にして、



「聞いたこともないようなひどい言いようではないか。昔はとても愛していた北の方がいても、やはりちょっとした浮気は始終していたものだけれど、こんなひどい怨み言を言われたこともなかったのに」



 と不快に思い、いっそう亡き北の方を恋しく思いながら、北の方と暮らしていた自分の邸に引きこもって憂鬱な毎日を過ごしている。


 そう言いながらも、二年ばかり経ったので、こうした間柄にも慣れてしまって、今ではそうした夫婦仲として暮らしているのだった。

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