若菜 その五十一
夜明け頃、玉鬘は帰った。
光源氏からはお土産の品が贈られた。
「こんなふうに世捨て人のように明け暮れているので、歳月のたつのも気づかないでいましたが、この祝いの宴のおかげで、自分の年を知らせてもらったのは、心細い気がしますね。時々はますます年をとったかどうか見比べてください。こう年をとりますと、大義になって窮屈なまま自由にお目にかかれないのが、本当に残念なことです」
などと言う。心に沁むことも切ない恋しさも、昔の様々な思い出が心に浮かばないわけではないので、玉鬘がなまじ顔を見せただけで、こんなにも早々と帰っていくのを、まったく物足りなく感じるのだった。
玉鬘も実父の太政大臣にはただ一通りの親子の縁に感じているだけで、光源氏のまたとはなくこまやかに行き届いていた心尽くしを、歳月とともに、妻とも母ともなり、すっかり落ち着いた今の身の上になって、しみじみありがたく思うのだった。
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