若菜 その三十三

 光源氏は准太上天皇だが、朝廷からいただく御封などは太上天皇とまったく同じ待遇と定められている。ところが本人は万事に本当の太上天皇のように格式ばったことはしない。世間の人々の敬い崇めていることは並々ではないのに、何事もことさら簡略にして、今度も例のように大げさではない車を使い、お供の上達部なども、ごく少ないしかるべき人々だけが馬ではなく、車でお供するのだった。


 朱雀院はこの訪問をとても待ちかねて喜び、病気の苦しさに強いて気を張り、元気を出して会った。


 格式ばったことはせず、ただいつもの院の居間に席をもう一つ加えて迎える。


 落飾し、あまりにも変わり果てた朱雀院の姿を目の当たりにしたときに、光源氏は過去も未来も真っ暗でわからなくなり、悲しさに涙がとめどなくあふれそうになり、咄嗟にそれを止めることもできなかった。

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