若菜 その七

「生来私は愚直な人間の上に子ゆえの闇に迷い、頑固な見苦しいことをしてはならないと思い、東宮のことはかえって他人事のように光源氏にお任せしきって無関心にしています。もっとも今の帝の御事は故院の遺言に違わず、譲位してきましたから、ご覧のように末世の名君として、これまでの私の治世の不面目を挽回してくださっています。私の望み通りで、まことにうれしく思っています。この秋の行幸から、昔のことがいろいろ一緒に思い出されて光源氏のことがしきりに懐かしくお会いしたく気掛かりでなりません。お目にかかって直々に申し上げたいことも様々ございます。必ずご自身でお越しくださるようにとあなたからおすすめしてください」



 などと涙ながらに言うのだった。

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