藤裏葉 その二十二
今日は四月八日の灌仏会で、誕生仏を寺から映して導師の僧が遅く来た。日が暮れて女君たちから女童たちを使いにして、お布施などを宮中の儀式と同じようにそれぞれ届けられた。
宮中の儀式にそのままならって、諸家の若殿立ちも大勢参集しているので、導師は格式ばった帝の御前の儀式の時よりもかえって妙に緊張して臆しがちになるのだった。
夕霧は心も上の空にそわそわとめかしたてて身だしなみを整え雲居の雁のところ出かける。格別深い関係ではなくても、情けをかけている若い女房たちの中にはそんな様子を見て恨めしいと思う者もいるのだった。
長年の恋の積もる思いも加わって、今は言うことのない二人は、水も洩らさぬ睦まじさだった。
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