梅枝 その四
二月の十日、雨が少し降り、寝殿の前に近い紅梅が花盛りで、色も香りも比べようもなく咲き匂っている。そこへ蛍兵部卿の宮が来た。裳着の支度が今日明日に迫ったので、忙しさのお見舞いに来たのだ。昔から二人はとりわけ仲のいい兄弟だったので、何の遠慮もなく、あれやこれやと相談して、紅梅を眺めているところに、「朝顔の前斎院から」といって、花が散ってまばらになった梅の枝につけた手紙が届いた。
兵部卿の宮はかねがね光源氏がこの人に執心とのことを聞いていたので、
「わざわざあちらから寄こされたのは、どんなお手紙でしょうね」
と、興味を示すと、光源氏はにっこりして、
「実はとても無遠慮なことをお願いしていたのですが、几帳面に早速薫物を調合してくださったのでしょう」
と言って、手紙を隠してしまうのだった。
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