真木柱 その二十九

 兄弟の中でも、兵衛の督は上達部なので、大仰だということで遠慮して、中将、侍従、民部の大輔などが、車を三輌ばかり連ねて北の方を迎えに来た。


 いつかはこうなるだろうとは、前から思っていたことだが、今とうとうその場に臨んで、この邸での生活も今日限りだと思うと、仕えている女房たちも、皆ほろほろと泣きあっている。女房たちは、



「これからの手狭で不慣れな仮住まいでは、とても大勢はお供できないでしょう。半分ほどの女房は、それぞれ実家に帰って、北の方がお里で落ち着かれてから、また参ることにしましょう」



 など取り決める。女房たちはめいめい身のまわりの物などを里に運び出したりして、散り散りに去っていくようだった。

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