藤袴 その十三

 夕霧は光源氏の真実の気持ちが知りたくて、



「今までこうして御養育なさったお気持ちを、世間では変なふうに噂しているようです。あの内大臣まで、そのようなことを匂わせて、髭黒の大将が、つてを求めて、あちらへ玉鬘との結婚を申し込まれたときにも、そんなふうにお返事なさいましたとか」



 と言うと、光源氏は笑って、



「世間の噂も内大臣の推量も、どちらもまったくお門違いというものだ。宮仕えにしても何にしても、結局は内大臣が得心なさって、こうしようとお決めになったことに従わなくてはなるまい。女には三従の道があるというのに、父親に従うという順序を違えて、私の勝手にするなどというのは、ありえないことだ」



 と言う。



「内大臣が内輪話をおっしゃるには、『六条の院には御身分の高い女君たちが前々からたくさんいらっしゃるので、玉鬘をその方々のお一人として同じ扱いにはできかねるため、半分は捨てるつもりで私にこうして玉鬘を押し付け、普通の宮仕えをさせておいて、実は思い通り自分のものにしようというお考えなのだ。いやはや頭の切れる、才覚のあるやり方だ』と、お喜びになっておいでとか。ある人から確かに聞いた話なのです」



 と、夕霧は実に生真面目な調子で話すのだった。

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