行幸 その四十八
近江の君は、
「和歌は、下手は下手ながら、どうにか詠めましょう。でも表立ったむずかしい申文のほうは、大臣からお願いくださいまして、私はちょっと言葉を添えるだけにして、お蔭を蒙らせていただきましょう」
と、両手をすり合わせて言っている。几帳のうしろなどで聞いている女房は、その場からそっと逃げ出して、やっと息をついている。
女御も顔を赤くして、たまらないほどみっともないと思っている。
内大臣は、
「むしゃくしゃするときは、近江の君の顔を見ると、すっかり気が紛れる」
と、もっぱら笑いの種にしていたが、世間の人は、
「自分が恥ずかしいから、照れ隠しにわざとああして娘に恥をかかせていらっしゃる」
などと、いろいろ噂するのだった。
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