行幸 その三
人々はまたとないすばらしい見物に我先にと争って出かけていく。それほどの身分でないものが、粗末な足弱の車などで来て、車輪を押しつぶされてあわれな様子になったものもいる。
桂川の浮橋のあたりなどにも、まだ場所が決まらず、風情を見せてうろうろしている立派な女車が多い。
西の対の玉鬘も、見物に出かけた。大勢の人々が、我こそはと競って綺羅を尽くしている顔だちや姿を見るにつけても、帝が赤色の袍を着て、端然と正面を向いたまま身じろぎもしない容姿に、比べられる人もいなかった。
玉鬘は父君の内大臣の姿に人知れず目をつけている。
内大臣は何となしにきらびやかでいかにも美しく、男盛りでいるけれど、やはり親王方とは格が違った。人臣としては最高に抜きんでた人と感ずるだけで、玉鬘には御輿の中の帝よりほかに目移りしそうもない。まして美男だとか、すてきだなどと言って、若い女房たちが死ぬほど恋焦がれている中将や少将、誰彼の殿上人たちなどはものの数でもなく、見渡しても帝以外誰一人目にも入らないのは、帝がまったく比類ないからなのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます