蛍 その二十八

 継母の意地悪さを書いた昔物語が多くあるなかで、継母の心とは、そんなものだと思い込まれては面白くないと、光源氏は考えるので、よく物語を厳選しながら清書させたり、絵などにも描かせるのだった。


 光源氏は、長男の夕霧を、こちらの紫の上には近づけないようにしているが、明石の姫君のほうには、それほど遠ざけることのないように、今から躾けている。


 自分が生きている間は、どちらにせよ同じことだが、死んだあとのことを考えてみると、やはり日ごろからなじんで、気心も知り合い、親しんでいたほうが、取り分けて情愛も深くなり将来の後ろ楯にもなるだろうと考えて、南の廂の間の御簾のうちへは、出入りを許している。それでも台盤所の女房たちの仲へ入ることは許さなかった。


 多くはいない子の仲なので、光源氏は二人の子を、それは大切に世話していた。夕霧の性質は、大体が重々しく、生真面目一方に考える人なので、光源氏は安心して明石の姫君を任せているのだった。

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