玉鬘 その五十

 あの末摘花の君が、どうにもしようのない方であったのを思い出し、そんなふうに落ちぶれた境遇で、成長した玉鬘の様子も心配なのだった。まずどんな返事を書くか、書きぶりを見たいと思った。光源氏は、何となく真面目な模範的な手紙を書き、端のほうに、



「このように申し上げますのを」




 知らずとも尋ねて知らむ三島江に

 生ふる三稜の筋は絶えじを




 と書いてあるのだった。この手紙は、右近が退出して自分で玉鬘に届け、光源氏の言葉なども伝える。玉鬘の召物や女房たちの衣料なども、光源氏からいろいろ贈った。紫の上にも相談したのだろう。御匣殿などに用意してある衣料の品々を取り寄せ、色合いや仕立てなど、特別に上等なものばかりを選んだので、田舎じみてしまっている乳母たちはなおさらのこと、何という見事なものかと目を見張らされるのだった。

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