乙女 その四十六
今、雲居の雁は十四歳になった。まだ見るからに未熟だったが、とてもおっとりと、しとやかで可愛らしい様子だ。大宮は、
「これまで私の側から片時も離さず、あなたを明け暮れ楽しいなぐさみ相手にと思い込んできたのに、これからはどんなに淋しくなることでしょう。もう余命幾ばくもない年になって、あなたの行く末を見届けることは出来ないだろうと、自分の寿命の短さを嘆いておりましたのに、今更私を見捨ててどこにお移りになるのかと思えば、本当に悲しくてなりません」
と、泣いた。
雲居の雁は、夕霧とのことを恥ずかしく思っているので、顔も上げられず、ただもうひたすら泣くばかりだった。
そこへ、夕霧の乳母の宰相の君が出てきて、
「私は雲居の雁様と同じ主人と思ってお頼りしてまいりました。それなのに残念なことに、こうしてあちらへお移りあそばすとは。頭の中将様が他の方とのご縁談をおすすめになりましても、そんなお考えに言いなりになりませんように」
などと、ひそひそ囁くので、雲居の雁はますます恥ずかしがって、ものも言えなかった。
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