乙女 その八

 大宮は嘆息して、



「なるほど、そこまで深くお考えになるのも父親としては当然なことでした。けれどもこちらの頭の中将なども、あまり世間に例のないなされ方だと不審がっているようです。本人も子供心にとても口惜しそうで、頭の中将や左衛門の督の子供たちなどを、自分よりも目下のものだと見下げていましたのに、その従兄弟たちはみなそれぞれ、位があがって一人前になっていきますのに、自分だけが六位の浅葱の袍を着ているのでは、とても辛いと沈んでいるようで、可哀そうでなりません」



 と言う。光源氏は笑って、



「すっかり大人になったつもりで不平を言うものですね。まったくたわいもない。そんな程度の年頃なのですよ」



 と言って、そういう夕霧を、いかにも可愛いと思うのだった。



「学問などしまして、もう少し物事を理解できるようになりましたら、そんな恨みは解消してしまうでしょう」



 と言うのだった。

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