Episode27

ビジネスホテルのワンルームを借りて、――殺し屋は今回の依頼主を待っている。


間もなくドアがノックされて、部屋に中年太りした男が入ってきた。


この男がが先日、殺し屋に連絡を投げてよこした。片手には銀色のアタッシュケースを持っている。


男は一瞥もなしに、早速二枚の写真を殺し屋に手渡した。写真にはそれぞれ今回のターゲットの人物が写っている。


「こいつらを消せばいいんだな」


殺し屋は確認を取る。


「ああ」


男は頷いた。


「私の妻と子供を殺した二人組だ」


以前テレビのニュースで流れていた銃殺事件――あれで唯一生き残った夫というのが、まさしくこの男だった。


男はおもむろにアタッシュケースの鍵を開けた。中には大量の札束が詰まっている。


「金は出す……早急に二人を始末してくれ」


「分かった」


細かい経緯に興味はない。


どうせアタッシュケースの大金を巡ってのことだ、ろくでもない。殺し屋は金さえ貰えればそれでいい。


「期待しているぞ」


用件が済むと、男は部屋を出て行った。


報復に対する復讐ね――胸中で、独りごちる。


面倒な部類だ。


早く仕事を済ませて、行きつけの喫茶店でのんびり過ごそうと思う。


それにしても、


「まさか、同業者を殺すことになるとは」


改めて二枚の写真を見る。それぞれの写真の人物に、殺し屋は何となく見覚えがあった。


泰造とアリス。


どっちとも、あの喫茶店にいたよな……。


二人の住所を調べて、食事中に狙撃することにした。なるべく彼らがやったことに似せて殺さないと、男のリベンジにならない。

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