Episode5

二階のリビング。


朝食を終え、ユズキは食器洗いをしている。カオリはテレビのニュースを眺めている。店主は席を外し、廊下で電話をしていた。ユズキに関して警察や親元に連絡を取っているのではなく、何やら知人と話をしているみたいだ。


食器をゴシゴシと洗う音。


今朝のニュースが、キッチンの少し遠くで流れている。


「あ」


カオリが意外そうな声を上げた。


「ユズキくん、今朝、どうやらこの町で銃殺事件が起きたみたいだよ」


銃殺……、殺人事件――。


急に死体の姿が脳裏を横切り、ユズキは思わず食器を落としそうになった。


「この町でですか。怖いですね」


「だね」


物騒な世の中だ、とカオリが呟いていると、廊下から店主が戻ってきた。


「ユズキくん、聞いてくれ」


店主はどこか自慢気だった。


「友人に子供用の従業服を発注した。昼には届くそうだ」


子供用の従業服? 何だろう。


「バーテン服ですか?」


店長は頷いた。


「カッコいいし、きっと似合うよ。着替えたら、早速下で働いてもらう」


「いよいよだね」


カオリがそう言って、テレビのチャンネルを変えた。画面に天気予報が映っている。


今日の予報は晴れだった。


頭の中の嫌なイメージを振り払い、よし、頑張ろう、とユズキは陰ながら意気込んだ。素敵な一日にしたい。

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