スシ・インザ・ルーム

第1話

セックスしないと出れない部屋というものがある。俺はそれを完成させた。天才発明家ゆえ造作もない。

相思相愛の男女、険悪な同性、はたまたそのへんの犬猫などいろいろな組合せで動作試験も完了している。

そこで実験を次の段階に進めるために俺が選んだものは…そう、寿司だ。なぜ寿司か、だと？美味しいよな。

実験の対象に今回俺が選んだのは、大トロと…甘エビ。美味しいからな。

寿司二艦をマジックアームで部屋に投入。今回選ばれなかったかっぱ巻きや玉子焼きなどをほうばりつつ、様子をみること10秒…20分…3時間…何も起こらない。

当たり前だ。寿司がセックスなどするはずがない。古いB級ビデオでもあるまい。

俺はためいきをついて、立ち上がる。今回は失敗に終わったが、どのみちハードな実験だった。やむを得ない結果といえよう。

こんなときは、寿司でも食って翌日からの元気に充てるが最良。ちょうどいいことに、部屋の真ん中に、俺の大好物の甘エビと大トロがある。

部屋に入り、寿司をつまんだところで俺は気づいた。ここは「セックスしないと出れない部屋」だと。

悩む暇はない。よくみれば、この脂の乗り具合、実にそそる…俺は、脂の乗った大トロからネタを引き剥がし、酢の香り未だ香ばしいシャリを愛おしげに抱きしめた。