悪女様たちの味方をしたら、世界征服しちゃたぜ
古海 拓人
一ノ乱 ヤンチャ少年三人組
「きゃあー」
教室中にマドンナ的な存在の山梨可南子の悲鳴が響き渡る。すると彼女の机の上に、
「きゃあ、カエル」
「やだ」
そこには、消しゴムぐらいのアマガエルがゲコゲコ鳴きながら佇んでいた。
他の女子や男子たちもわぁーわぁーと騒ぐ。
「皆、落ち着け、落ち着きなさい」
担任の矢部久雄先生が皆を制止する。
すると、「ははは、うまくいったぜ」
と大爆笑する少年がいた。
「大魔王、お前か!!」
全員が犯人である大魔王と名乗る眼鏡をかけた少年に怒鳴る。
山崎 真緒は、マジメそうな顔とは裏腹に大魔王と名前が付くほどケンカやいたずら、いじわるが大好きな超の付く問題児だ。
一週間どころか、三日に一回、いや三時間に一度は何か問題を起こすのは決まって彼だ。
放課後、彼は首根っこを捕まれて校長室に矢部先生に連行された。岡田良人校長先生はまたかと呆れた顔で彼を出迎えた。
「山崎くん、昨日は給食のデザートのプリンを全員分を盗み食い、一昨日は石山教頭先生の車にぬいぐるみや花束、お菓子を贈るなどのいたずらがあまりにも過ぎますよ」
廊下に聞こえるくらいの校長の説教だが、真緒にはどこ吹く風、鼻をほじりなが“ケロッ”としていた。普通の子なら泣き出すのだが、真緒はここに呼ばれる常連客だからだ。
「真緒くん、どうして、すぐにいたずらやケンカばかりするの?私にはプレゼントをくれるのに、他の人にはどうして…」
教頭の石山敦子は厳しく問い詰めた時、真緒はニヤリと笑い。
「教頭先生が好みだからだよ」
彼女のブランドのロゴが入ったロングスカートに“スウー”と近づき、「エイッ」と思いっきり捲り上げた。
黒いショートヘアーの敦子は、まだ三十路前だが、色白でふくよかなたわわを持つ女子大生や新卒社会人と思わせられるような美貌の持ち主だ。
「イヤー、真緒くん、あなたって子は」
ワインレッドのレースの入ったパンティーが露わになる。
「先生、さいならー」
「こら、真緒」
「山崎くん、戻りなさい!!!」
ベーと赤い舌を出して、彼は一目散に下駄箱に向かった。
「今日は金曜、スイミングあるんで」
真緒は、理由も付け加えた。
“キー”となる敦子先生、校長と教頭に必死に謝る矢部先生。
蛇足だが、石山教頭がその若さで抜擢されたのは、地元でも二十年に一人の秀才と言われ、アメリカのハーバード大を弱冠二十歳で飛び級で卒業し、その後帰国し、子供時代からの憧れだった教師になり、五年ほど学級担任を母校で勤めて昇進試験を受けて高成績で合格、教頭になった。
ただ、最近は真緒が一番の悩みの種だ。
真緒は、そのまま帰宅しなかった。
なぜなら、スイミングがあると言うのは本当だからだ。何より、学校よりも家よりも、遊び場よりも、そこが一番落ち着くのだ。
「博和、拓海、お待たせ」
「真緒、遅いぞ」
「本当だ。また、先生たちからの説教か」
「イエス、アイ、ドゥ」
真緒は得意気に同い年ぐらいの少年たちに言った。
真緒と同じ黒髪だが、少しだけシャギの入った男子の名前は拓海、栗色のフワッとし、二人より背が高いのが博和だ。
三人は早速、更衣室に向かった。
だが、類は友を呼ぶと言う。
ここでも、
「それ」
「うわ」
男子生徒四人が飛び込みのタイムを測っている時、真緒が二人、博和、拓海が残りの二人を後ろから突き落とす。
「こら、山崎、藤堂、谷」
男性コーチでゴリマッチョの吉田が怒声を三人に飛ばす。
「また、お前らか一昨日は女子大生クラスの女子たちの邪魔をし、先週はシニアクラスのご年配の方々が練習中にいたずらして、毎度毎度いいかげんにせんか」
近くの大学の水泳部の女子大生が十三人ほど練習している所に、真緒、拓海、博和が箱いっぱいに入った精巧に出来た蛇のおもちゃをプールに投げ込んだのだ。
「きゃあ」
遅れてやってきた男子の部員たちもこれには驚愕し、吉田先生と男子部員たちはカンカンに怒りながら、三人を捕まえて片付けさせた。
その前は、シニアの六十代や七十代のおじい様やおばあ様たちのクラスがタイムを測っている時に、ラジコンのモーターボートやヨット、潜水艦を乱入させるなど…学校でのいたずらはまだ序の口、習い事のスイミングでもやらかすワンパク少年三人組だった。
しかも、三人寄れば文殊の知恵、色々持っている引き出しを出し合い、必ず周りを巻き込む騒動を引き起こすのだ。
吉田は、その都度厳しく怒るが、
「さあ、ズッではなく、ワンパク三人組、今日は新しい先生たちが来てくれるよ。体操してプールサイドに集合してくれないかい」
「野辺コーチ」
奥から手を叩きながら、眼鏡をした短髪の男性コーチが現れた。
彼は野辺と言う中学生と高校生、大学生のクラスを吉田と担当している。どうやら、今日から新しいコーチが三人来るそうだ。
「わーい、行こうぜ。拓海に博和」
「おう」
「よし」
吉田は、全くと頭を抱えると野辺が、
「吉田先輩、真緒の事はなるべく僕と矢部先生も一緒に指導しておくので、今回も大目に見ていただけませんか?」
「わかった。頼んだぞ」
吉田は手を横に上げて、タイムを測っていた受講生たちに戻ってやり直すことを指示する。
野辺は、「申し訳ありません」と再度頭を下げた。
ちなみに、なぜ、真緒の担任の矢部先生を知っているのかと言うと彼はニ十年前、当時中学生だった彼を大学生の矢部先生が家庭教師のアルバイトをしていて大変お世話になった一番弟子だ。
真緒を受講生として受け持った時に偶然再会したのだ。
(ただ、先生も真緒には頭を抱えているとおっしゃていたけど…)
心の中で苦笑いする野辺だった。
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