第三話

 休日の過ごし方といえば、買い物やスポーツ、趣味など様々な過ごし方がある。じゃあ、私はというと、家で一日中寝るか、録画したドラマを観るかのいずれかである。平日は睡眠時間が少ないし、忙しいため疲労感をリセットしたい。他にもやりたいことがあるし、今日一日が自分にとって最高の時間だったか決めるのは難しい。しかし、今日一日は最高の一日になると確信できる。今日は里恵と映画を観に行く。誰かと一緒に出かけるのは久しぶりだ。特に私は映画をDVDで観ることが多い。映画館で観るのは数年ぶりだが、映画館でしか味わえない感じも好きだ。

秋のイメージしたブラウンの服を着て、里恵から貰ったネックレスを着けて家を出た。里恵とは映画館の近い駅前に待ち合わせることにした。里恵と約束した時間より早く着いた。駅前に着くと急に大きな音がした。音がした方向を見ると、ある車が一つ前の車に衝突していた。ドライバー同士が出てきて、話し始めた。ドライバー同士に怪我がなかったようで良かった。

 私は里恵を探し、人が多く見つけることには苦労したが見つけられた。里恵の服装は秋に合った色であるキャラメルとカーキ色でレトロ感あるデザインの服装をしている。加えて、私が挙げたネックレスも着けている。

(里恵の私服姿は初めてだが、見惚れてしまうほどに可愛い。)

 里恵のもとに向かっていく途中、私はあることに気付いた。里恵の目の前に知らない男性が二人いて、里恵に話しかけている。

「一人で寂しいでしょ。一緒に出掛けようよ」

「いえ、私は・・・。その・・・。」

「いいじゃん。飽きさせないし、保証するから遊ぼうよ」

 里恵の反応を見れば嫌がっているし、間違いない、しつこいナンパだ。私の大切な里恵に 嫌な思いをさせた 男二人に怒りを覚え、私は大声で怒鳴った。

「そこの二人、何をしているの!!」

「なんだよ、お前は」

「『なんだよ』 は こっちの台詞だわ。私の里恵に手を出すなんて」

「はぁ。『私の』だ。何を言うと思えば。ふざけたこと ぬかすと、殴るぞ」

(やばい。このままでは危ない)

 男二人からの脅しを受け、私は怯んでしまった。このままでは危ないと思った時、彼らの後ろに警察官がいたことに気づいた。さっきの衝突事故で来たのだろう。そして、私は大声で悲鳴をあげた。

「きゃー。誰か助けて!!殴られる」

「そこの君たち、何をしている」

(チャンス!)

「今の内に逃げるよ、里恵」

 ナンパ二人が警察官に気がいっている内に、私は里恵の手を引っ張り、全力で逃げた。そして、しばらく走り続け、行った先にあった公園に逃げ込んだ。

(ここまで来れば、大丈夫でしょう)

「里恵、大丈夫?」

「・・・」

「里恵?」

 急に里恵は私に抱きつき、泣き始めた

「美幸さん、ありがとうございます。見ず知らずの人に声を掛けられ、しつこく迫られて、怖かったです。美幸さんが助けてくれた時は嬉しかったです」

「怖かったね。私が来るまで、頑張ったね」

 泣いている里恵の頭を撫でた。本当に里恵は頑張ったと思う。人に対し恐怖心があるのに、この子は頑張った。この子が泣いている姿を見て、心が苦しくなり、この子を守りたい という気持ちが生まれた。

「これからは私が守ってあげるからね。今は好きなだけ泣いていいよ」

「美幸さん」

 それからはというものの、しばらく里恵は泣き続け、慰めていたら、日が暮れ始めていた

「美幸さん、私のせいで、せっかくのお出かけを台無しにしてしまい申し訳ありません」

「気にすることはないよ。確かに里恵と映画を観られなかったことは残念だけど、里恵と一緒に居られたことだけでも嬉しいよ」

「ありがとうございます」

「このまま、お出かけを終わらせるのも・・・。そうだ、里恵、今晩はシフト入っている?」

「いえ、今日は休みにしてもらいました」

さすが、香澄さん ありがとう。今度、美味しいワインあげるね と心の中で喜んだ

「私の家に来ない?」

「美幸さんの家にですか。よろしいのですか」

「良いよ。さすがに、このままではお互い 満足して帰れないと思うし、もう少し里恵と居たいから」

「はい、喜んで」

「これから、家に案内するね」

「お願いします」

 そうして、家に向かった。途中、里恵が手を強く握ってきた。私もこの手を離さないという思いでしっかり握った。

(『私の里恵』や『守ってあげる』など、今思うと恥ずかしいし、自然に言ってしまった。これは里恵に恋しているということなのかな・・・)

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