バカ問

辶(しんにょう)

第1話 開幕

突然だが皆さんは雨はお好きだろうか?

雨は憂鬱なものであるが恵を与える、

乾いた大地に潤いを与える、

そして時に人と人を巡り合わせる…

これは、その雨の中巡り合ってしまった者たちの物語である。いや間違いなく。


「くっそ、今日雨なんか降りません100%ですって言ってたじゃねーか嘘 つき天気予報め、もう絶対あのチャンネルは見ないからな」

一人の男が降りしきる雨の中を走る、走る。

手に持っていた四角く黒い”THE 社会人”みたいなカバンを頭の上に掲げて傘がわりにして文句垂れ流しで、折り畳み傘を常備していた、運のよいまたは準備のよい人々の波をかき分ける。

「今思ったけどあのチャンネル見ないとなると見るチャンネルがなくなる な・・・CSであるかなというより今の時代はネットか?」

ポジティブなのかネガティブなのかわからない発言のあと彼の走る道の先には一つのアパートが見えそこにたどり着く。

「ここで雨宿りさせてもらうか」

そのアパートの住民達のポスト軍の前で彼は足を止める。

「しかしひでぇ雨、スーツが台無し、明日もまた面接しなきゃならねぇってぇのに・・・これじゃあ落ちても仕方がないね、うん。仕方がないんだ」

 別に誰かに聞かせる訳でもないのに独り言を割と大きい声でしゃべる。

いや言い聞かせているのだろう自分自身に。

さてここで突然だが一つ賢くなれる豆知識的なものを一つ、

”不可抗力”というものがある。その時のなんらかの状況が偶々乗じてなにかしらのことがおきる、という物である。

そんな話をなぜ今するかそれはその現象が起きたからである、今その誰かに聞かせている訳ではないその独り言を聞かれてしまったのだ。それに返事がつけばそれはもう独り言ではない。

 もし聞かれた相手がきれいなおねいさんとか美人の姉さんとかならどれだけよかったか、いや彼以外の人物いやそれも違う、生物ならどれだけ

どれだけ・・・・・それほどの人物があらわれたのだ。

            ポストの中から。

 ”パカっ”という間抜けな音がでると彼は彼の後ろに現れた。

「そうか、ならその願望私が打ち砕いてやる」


「お前、うちの社員になれ」 

 そのセリフのあと彼はポストの蓋を閉じたまぁそりゃそうだ。

(なんだいまの人っぽかったが、人が一直線に、顔がこっちを向いて組体 操の飛行機の状態みたいな形で入ってた?住んでた?それから俺の会社 で働け?はてなマークがいっぱいだ!!!!)

 脳内で起きたことの整理をしていると再びポストのドアが開いた。

「なぜ閉めた」

「そしてしめーる」

「そうはいくか!!」

そう言うとポストの中の男は腕を出しポストのドアが閉まらないように

ドアの裏側から手で押さえつけ始めた。

「なぜ閉めようとする!!」

「当たり前です」

「ではどうしたら俺の話を聞いてくれる!!」

「とりあえずポストの中から出てきてください」

「OK、わかった」

「いいんだっ!」

 てっきり駄目だと言われると思っていたらしくて普通にびっくりしてしまっていた。

「という訳だもう降ろしていいぞ」

 ポストの男が誰かに話かける、ここで彼は思い出したのだ、組体操の飛行機という技は一人ではできないことを。上半身はポストに任せているが下半身は誰に任せているのか、それは・・・。

「ふぅーやっと終わりましたか、チュウさん軽いけどさすがに3時間はつ らいですよ~」

 女だった。おそらく普段はロングの髪型なのだろうが今は髪をまとめ後ろでしばっていた。それよりも気になるのは美人だったということよりも

その服装にあった。まるで時代劇やゲームの世界に出てくるようなつなぎを着ていたのだ。とにかく目立つ!速そう!そんなイメージだった。

「ポストから世界を見ればなにか変わるかもとか言って始めたコレ意味あ りました?」

「ああ、見えはしなかったが見つかりはしたぞ、ほらそこに」

「あら本当に?」

 そう言って彼が指さし彼女が見つめる先には今まさに逃げようとしていた男の姿があった。

「ナナシ、捕らえろ」

「御意」

彼女は彼が予想した通りに速かった。


場所は変わってアパートの部屋の中にて。

「では自己紹介から始めよう 俺は”戦田ヶ原チュウ” 戦田ヶ原の戦に

 戦田ヶ原の田 戦田ヶ原のヶ 戦田ヶ原の原で戦田ヶ原チュウだ」

「せ、せきだがはら?チュウ??」

 渡された名刺とセリフ、その両方に驚く

(ちなみにだが彼の名刺は白背景に名前と住所だけのシンプルなもの)

「目立つ名前だろ、それに覚えやすくていい、シンプルイズベストよ」

「目立ちまくりで覚えずらいの間違いだと思いますよ」

 いや戦田ヶ原ってとこにツッコミを入れろよ、女のツッコミにツッコミを入れる、心の中で突っ込む。

「あっ申し遅れました私”ナナシ”と申します。よろしくお願いします」

「あっご丁寧にどうも」

「おい、どうして俺ん時は返しなしで、ナナシん時はあるんだよ」

「えっ?そりゃまぁ、そんなことより何個か質問いいですか」

「未だ他人行儀なのが気になるがいいぞ」

「なーんで俺拘束されてんの」

「逃げるから」

 そう彼は今椅子にくくり付けられる形であった。

名刺も手に取って見ていたのではなく上から机に置いたままの状態で見ていたのだ。

「2つ目はマジで俺ここで働くの?」

「イグザクトリー その通りでございますってやつだ」  

「そのとうり、か」

 どうやら彼、チュウとかいう男は本当に俺をここで働かせるつもりらしい得体のしれないこの会社?で???

「で、ここはなんの会社で?」 

「んー情報屋兼なんでも屋」

「一日だ5億稼ぐ時もあればその3日後に2兆円の借金を背負うような  所です。どうだぁ、楽しみでしょう?」

「一寸先は闇だーーーーーーー!!!!!!!」   

 彼は叫んだ、しかしその時落ちた雷によってボイスはかき消された

「そういえばあなたの名前、なんて言うんですか?」

「-----えっああ俺の名前は…」

「いやちょっと待て俺が決める」

「決める?当てるじゃなくて?」

そして彼は30秒ほど腕組みをして悩み、そしてはじき出したその答えは

「鍋煮込み太郎 か スリッパ!!!」

「スリッパでおねがいします!!!」

 始めてコンマ何秒という時間の世界に突入した。

「お前、思った以上にバカだな。よし!お前の名前はバカだ」



              バ   カ



「バ・カ・・・・・・ですか?」

「そう今日からお前のことそう呼ぶから」

「バカさんですね、よろしくお願いします」

 彼、バカは気がついていなかった。もうすでに彼は、バカは、ここで働くということを否定しなくなっているということに。

「ばっばあbっばあ    かっかかk---------」

まるで文字化けしたような声をだす(というか声なのか?)

こうして彼の新しい”バカ”という名前の人生が始まったのである。

                              つづく






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