僕はみんなの死期がわかる。

大津 千代

第1話 死期が見える人。

普通の高校に、通い普通に学校生活をしている男子高校の黒野くろの 綾人あやと。綾人はクラスでは地味な存在でほとんど友達もいない。要するにクラスの隠キャ的存在。休み時間はずっと本を読んで過ごしている。



しかし、綾人には人には見えないあるものが見えるのだった。それは「死期」。人がいつ、どこで、何時に死ぬか綾人には全てわかるのだった。それらの情報は綾人の見ている人の頭上付近に現れる。ちなみに、綾人の瞳の中には特殊な物は入っていない。




クラスを見渡すと話している男子、女子の頭上付近にその人たちの死期が浮かび上がる。これも綾人にとってはいつもの光景だ。綾人は廊下側の机付近で話しているクラスメイトの男子を見る。


その頭上には《明日、朝7時30分頃》と表示されている。それは、その男子生徒の死期を示している。何をどうしても死期が迫る人は救えない。以前何度も試したが救えなかったのだった。



「明日…か。さようなら」



小声でその男子生徒に言う。しかし遠い事もあり友達と話しているその男子生徒には聞こえてはいなかった。自分が死ぬ日が明日だと、知らずに。


綾人が、読書を再開する。今言っても多分信じてもらえない、それにその事を言っても綾人にはその人を救えない。




その死は避ける事の出来ない、死なのだから。








その日の学校の授業がすべて終わり自宅へと向かっている綾人。その帰り道に通る街中の人たちにも頭上付近に死期が現れる。すれ違う人、子供連れの親子、買い物をする主婦、商売をする店の店主、帰宅途中の学生たち、綾人の視界に映る人たち全員の頭上付近に死期が示される。





綾人は学校付近の駅に着き、ホーム入って来た電車に乗った。電車の中は帰宅ラッシュもあり満員だった。電車のドア付近で外の景色を見ながら、降りる駅へと綾人の乗る電車は進む。







電車から降り、再び歩く綾人。この間にも綾人の視界に入る人全てに死期が見える。これも慣れたものだった。


そして普通に街中を歩き自宅へと綾人は向かって行った。


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