第18話 偽造……?

 ギルド職員が一方的に怒ってくるこの状況。一体どうすればいいのだろうか?

 土下座か? 土下座しておけばいいんだろうか?


「姉さん、いきなり怒ってもイズミちゃん達も困っちゃうわ」


 その時、ヴェルディアさんが、さりげなくフォローをしてくれた。

 ん? と言うか、今何やらおかしな単語が……。


「姉さん?」


「そうよ、私の姉さんのウィルディよ」


「実は私たち三姉妹なんだよねー」


 なるほど、そう言われれば……何処と無く雰囲気が似てる……気がする。

 ウィルディさんは、白茶色の髪を肩口まで伸ばしている、ツリ目の美人さんだ。完全な綺麗系の美人さんで、三姉妹が並ぶと上から綺麗系、ハイブリッド、可愛い系と言った感じかな。

 怒ってなければなお綺麗なのに……。


「スクラナ! 貴女、カードの偽造は違反だって知っているでしょう!?」


「だから! 偽造なんてやってないったら! 目の前で血も貰ったし、どうやって偽造出来るのよ!」


 どうやら僕達のギルドカードが、問題になっている様だ。

『偽造』何て言葉が聞こえてきたが、いったいどこがいけないんだろう?


「なんだ、なんだ。一体何の騒ぎだ!」


 ウィルディさんとスクラナさんが言い争っていると、マスターとスルトが近づいてきた。そりゃあれだけ騒いでいれば何事かと思うよね。


「マスター!! スクラナが、この子達のカードを作ったのですが……」

「私は普通に作っただけです!! なのにウィル姉さんが!!」


「わかった、わかった。わかったから1人ずつ喋ってくれ」


 2人掛りでマスターに説明をしている。

 と言うか、いったい何が問題なんだろうか?


「なるほどな。どれ、そのカードを見せてみろ」


 ウィルディさんからカードを受け取ったマスターは、じっくりとそれこそ穴が開くほど見ている。

 すると、急に僕達に向けてカードを差し出してくる。


「ほれ、お前らのカードだ。よーく見てみろ」


 受け取った金属のカードには、自分の情報が書かれていた。


 名前:和泉 年齢:20歳 性別:男

 ランク:D(仮)

 スキル:魔砲師・片手剣(上)•格闘(中)•冒険者


 ふむ、名前は用紙に書いたからわからないでもないけど、この年齢とか性別、スキルなんてのはどうやって記載しているんだろう?


「記載の情報に間違いはあるか?」


 名前、年齢、性別、どれを見ても間違いはない。ランクとスキルに関してはよくわかっていないし。


「大丈夫です」

「問題ないな」

「OKでーす」


 僕達は、口を揃えて問題がない事を告げる。


「どうしてよ! 1箇所おかしな部分があるでしょ!!」


 しかし、ウィルディさんはその事に納得していない様で、またもやお怒りの雷が落ちた。

 でも、おかしな部分と言われても……。


「いずんちゅ、ここじゃね?」

「和泉さん、ここだって」


 その時、友人2人からカードの1部分を指さされた。

 そこには、僕の性別が書かれていた。


「僕、男ですけど?」


「今のお前を見て何人が男だと思うよ」


 確かに。自慢じゃないが今の僕はどこに出しても恥ずかしくない美少女だ。

 なるほど、これならば偽造と言われてもおかしくは無いか。でも、もしかしてがあるかもしれないから一応確認をしよう。


「ヴェルディアさん。この性別とか年齢ってどうやってわかるんですか?」


「これはね、登録する時に血を貰ったでしょう? その情報が記載されているのよ」


 僕は近くにいたヴェルディアさんから説明を受ける。

 血に含まれる情報がそのまま記載されるなら間違うはずもない。ならば、やはり偽造なんかはされてないんじゃ無いかな?


「あのー間違いは無いと思うんですけど……」


「そう、貴女はそこまで自信があるのね」


 僕は、恐る恐るウィルディさんに声をかけたのだが、すごく睨まれてしまった。美人さんに睨まれるのって、なんでこんなに怖いのだろう? 目かなぁ?


 自信があるかと言われれば、僕には20年来連れ添った相棒がいるからね。相棒を見せれば納得はしてくれると思うけど……さすがに公共の場で、パンツを下ろす訳にはいかないよね。

 まぁでも、この質問は自信があるかないかと言う質問なので、答えは決まっている。


「自信はありますよ。ずっとそうなんですから」


「そう……そこまで言うのなら、証明して見せなさい!」


 なんと、証明して見せろとな? と言うことは、脱げと、この大勢の人の前で!? それはちょっと……。


「恥ずかしいですよぅ」


「何を恥ずかしがるの? 自信があるのでしょう!」


 いや、自信がある事はあるけど……。


「場所は、ここの訓練場でいいでしょう。マスター、立会いをお願いします。あと、ヴェルと……アウル! あんた暇でしょう! 付き合いなさい!!」


 立会い人までつけるの!? それって、ウィルディさんの他にも僕の息子が本物かどうか調べるって事?


「無理です! ウィルディさんだけじゃダメなんですか?」


「不正を防ぐためよ、それとも何? やましい事でもあるの?」


 やましい事は無いが、やらしい事に……って違う違う。


「でも、初めては2人きりの方が……あ、いや多人数が嫌だって訳じゃ無いんですよ? でも、数も合わないし、それに訓練場って外ですよね? そこまでアブノーマルになると、もう僕では手に負えないと言いますか、武さんの領分と言いますか……」


「貴女は何を言っているの?」


 ウィルディさんは、眉をひそめている。

 おや? どこか様子がおかしいぞ?


「何って、これからカードの内容が正しいか調べるんですよね?」


「そうよ」


「「?」」


 同じ事を言っているのだが、何故か決定的な部分で食い違っているような……?


「おい、いずんちゅ。ちょっと待て」


「姉さんも落ち着いて」


 お互いに首を傾げているところに、ひなぞーとヴェルディアさんの待ったがかかった。


「いずんちゅ、お前何を確認するつもりだったんだ?」


「何って……こここ部分でしょう?」


 僕は持っていたカードの性別の部分を指差し、皆んなに見せるようにした。


「姉さんは何が問題だと思っていたの?」


「え? 私はこのギルドランクが初めからDっていうのが信じられなくて、偽造したんじゃ無いかって……」


 なるほど、ってちょっと待って欲しい。


「ギルドランク?」

「性別?」


 僕とウィルディさんは同時に声を出してしまった。


「え? ギルドランクが初めからDっておかしいんですか?」


「おかしいに決まっているでしょ! Dランクって言えば、ある意味冒険者のボーダーラインよ? このランクになってようやく一人前と言われるのよ」


 なんと、じゃあ僕達は初めては登録したのに、いきなり一人前認定されたようなものなのか。それは疑われも仕方がないね。


「それよりも貴女、性別を確かめるって言っていたわね」


 ウィルディさんはカードを覗き込みながら質問をしてきた。


「性別なんて、貴女は可愛らしい女の……男? え? 私目が悪くなったかしら? 男って書いてある様に見えるのだけど」


 何を今更、僕は初めっから男じゃないですか。


「僕は男ですよ?」


「「「男ぉ!?」」」


 驚きの声は3人分重なっていた。

 どうやら話しを聞いていたヴェルディアさんとスクラナさんも一緒に驚いた様だ。


「やだなぁ、こう見えても僕は男ですよ」


『いや、見えないから!』


 なんと、ギルド内で話しを聞いていた全員から否定された。わかっていたけど、全員から否定されるって……。


「あ、貴方……性別を確認するって……」


 ブルーな気分に突入していると、ウィルディさんに肩を叩かれた。何やら声が震えているし、顔も若干赤い様な?


「いや、このパンツの中を確認するのかなぁって」


「変態じゃない!! いいわ、私がその根性叩き直してあげる!」


 理不尽だ! 僕は本当の事を言ったまでなのに!

 ん? 本当の事だからダメだったのか?

 何故か、このまま訓練場で戦う事が決定されてしまった。

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