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「長谷川さん、お待たせ」








携帯のディスプレイでメイクを確認していると、聞き慣れた足音が聞こえてきて振り返る。









「おつかれさまです」








こくりと頭をさげると、泉さんは笑いながらわたしの肩に触れた。








「もうオフィスじゃないんだから、そんなに堅くならなくていいよ」









「え、あ、すいません‥!」









ドキッとして、返答に詰まった。






わたしが無意識に泉さんを意識してるみたいで恥ずかしくて、ぱたぱたと顔を仰いだ。








「よし、なに食うか」









「どうしましょうね」








そんな様子に泉さんが微笑んでいたことも知らず、わたしは泉さんの先を歩き始める。









この時間を楽しみにしていただけあって、一緒に歩いてるだけで楽しくて仕方ない。








「長谷川さんはなにが好きなの?」










「なんでも好きですよ?‥しいていうなら、イタリアンですかね」










「じゃあイタリアン行くか」









一言一言の会話でさえ、楽しくて。









時間なんて止まればいいのに、なんてありがちなことを思った。


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