それでも彼に恋をする

@mnmy1306

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「長谷川さん、来客だからお茶出してくれる?」






頭上から聞こえた柔らかな声に、私は顔を上げる。







''課長''な彼は、私のことをそう呼ぶ。







「わかりました。泉さんのお客様ですか?」






だから''部下''な私も、彼のことをそう呼んだ。







顧客でね、とボソッとつぶやいた彼は私が給湯室に入ると続いて給湯室に入ってきた。






「待たせていいんですか?」





中々戻ろうとしない彼にからかうように言うと、彼は私の髪の毛に触れながら耳元で呟いた。







「今日、会いたいんだけど」








さっきとは違う低い声でそう囁くと、首筋に一つキスを落とす。




くすぐったさに肩をすくめると、私の目を覗き込んできて、いい?と尋ねた。






断らないってわかってるくせに。







「駅で待ってて、迎えに行く」






こくりと頷いた私にそうとだけ伝えると、彼は私に背を向ける。






それがなんだか惜しくて、咄嗟にシャツの袖を掴んだ。






「すぐ会えるから」







私を安心させるかのように優しい笑顔で微笑んで、



私に言い聞かせるかのように甘い声で囁いた。





そして、






「じゃあ、戻るな」







きらりと指輪が光る左手で、私の腕に優しく触れた。

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