第66話 錬成夜話

 勢いづいた俺たちは、23匹のネピア・サイドワインダーを狩り、2個の魔石を手に入れることができた。

マモル君のお陰で俺の防御力も上がり、より前線に近い位置で活動できるようになったのが嬉しかった。

メンバーのレベルもどんどん上がっている。

そしてゴブのレベルが今日15に達し、【知力】が51になった。

「う~がうがが~♪ う~がうがが~♪」

ゴブは鼻歌を覚えた。

夕食用の蛇をさばきながら鼻歌を歌うゴブを見て、俺は猛烈に感動している。

こいつはどこまで育つのだろう。

ゴブは今後も大事に育てていこうと思う。

だがゴブはGランクの魔石を10個組み合わせてできたゴーレムだ。

1体のゴーレムに使える魔石は10個までで、今更追加することはできない。

ボディーも木製だ。

木は温もりがあるが強度は弱い。

ステータスを確認してみよう。


【名前】 ゴブ1号

【年齢】 0歳

【Lv】 15

【HP】 167/167 〈初期値162〉

【MP】 0/0

【攻撃力】53(+221)メイス(聖属性)〈初期値47〉

【防御力】172 (+175)〈初期値142〉アイアンメイル、ヘルメット、タワーシールド

【体力】 329(-7)〈初期値320〉

【知力】 51 〈初期値12〉

【素早さ】40 (-17)〈初期値37〉

【スキル】灯火Lv.3 目の部分が光って辺りを照らす。射撃Lv.10 シールド防御Lv.4

シールドバッシュLv.2

【備考】 半自立型ゴーレム。行動には3MP/分が必要。MPチャージは180まで。よって主人から1時間以上離れて行動できない。半径4メートル以内に主人がいれば魔力をチャージすることが出来る。

【次回レベル必要経験値】 2672/9000


初期値を見てもらうとわかるが、【知力】以外の性能はあまり上がっていない。

今後も期待できない気がする。

だが今更ゴブを封印することなど俺にはできない。

解決策の一つとして装備をよくすることがあげられる。

俺と違って元から体力の数値はよいので少し重くても余裕で装備が可能だ。

武器ももっとすごいのを持たせてしまおう。

マモル君のような装備型ゴーレムを持たせてやりたいが、【MP】のないゴブには不可能だ。

いっそ高ランク魔石で外付けジェネレーターを取り付けてしまうか? 

ボディーに脳波を感知する素材でコーティングを施して反応速度を上げるという手もある。

いろいろな考えが浮かぶが、とりあえず迷宮から出たら武器と防具をつくってやることにしよう。


 蛇を料理することに関して、パーティー内で反発が出ると思いきや全くでなかった。

メグいわく、蛇を食べるのは下町では当たり前なのだそうだ。

軽い忌避感きひかんがあるのは俺だけか。

自分が食べやすいようにヘビは唐揚げにしてみた。

切り身にした蛇に塩コショウをして、小麦粉を薄くつける。

油はたくさん持ってこなかったので、フライパンに1センチほどひいて揚げた。

蛇の味は鶏肉と魚の中間? みたいな味だ。

カリッと揚がって美味しかったが、どちらかと言えば鶏肉の方が美味しいというのが俺の正直な感想だ。

メンバーがみなたくさん食べてくれたのが嬉しかった。


 翌日も朝から大蛇を狩った。

昨日より人が増えている。

ゴールドラッシュならぬFランクラッシュが起きているようだ。

昼を過ぎるころにはどこに行ってもパーティーが蛇狩りをしていて、5区の人口密度がとんでもなく上がってしまった。

「帰る…」

ボニーさんは人混みが嫌いなようだ。

実際のところ人が多すぎて狩りにならなくなっている。

時間とともに効率は下がり、その下降は留まるところをみせない。

本当は5区にもう一泊する予定だったが、予定を切り上げて2区に移動した。

Fランクの魔石はあの後2個しか出ていない。

その2個も俺が買い取らせてもらった。


 2区に来るのは久しぶりだ。

ここでは以前に美容関係の素材を採取した。

スケルトンの巣窟そうくつでもある。

ようやく俺のハイドロキャノン・デラックス(高性能水鉄砲)が火を噴くときがやってきた。

噴くのは火じゃなくて聖水だけどね。

この二日間、桶一杯分の聖水を持ち歩くのはものすごく重かったぜ。

今日も迷宮は寒い。

前回は聖水が凍り付いて発射できなかったけど、今回は既に生活魔法で人肌に温めてある。

「見せてもらおうか、おっさんの新兵器の性能とやらを」

「なめるなよ」

俺は迫りくるスケルトンたちに照準を定め、ゆっくりとトリガーに指をかけた。

今度こそ、この聖水をくらって昇天しちまいな!

 結果は大成功だった。

聖水を浴びた骨は煙を上げながら溶けていく。

「やったじゃねえか、おっさん!」

「おめでとうございます」

「ありがとうジャン、クロ」

ハイドロキャノンはただの水鉄砲なので発射にMPを消費しない。

だから、俺の次にジャンやクロも使って、スケルトンを殲滅していった。

「イッペイさん、ちょっと気になったんですけど……」

ハイドロキャノンを使っていたクロがおずおずと話しかけてくる。

なにかトラブルか?

「どうした?」

「あの、聖水って必要でしょうか? イッペイさんなら銃本体に聖属性のエンチャントを施せるのではと思いまして…」

……? 

……っ!! 

そうだ。

水ではなく、銃に「聖」の属性を付ければよかったんだ。

水は生活魔法でいくらでも作りだせる。

1万リムもする、あんなくそ重い桶一杯分の聖水を苦労して運ぶこともなかったんだ。

「バカ……」

「アホだなおっさん!」

「フォローできません」

「ごめんなさい、僕が余計なことを言いました! 気にしないでくださいイッペイさん!」

皆の声が遠くに聞こえる。

スケルトンとの長きにわたる抗争はこれで一つの終局を迎えたが、有終ゆうしゅうを飾ることはできなかった。



 三日目の夜は第二階層2区の小部屋で過ごした。

錬成作業をしたかった俺は長めの見張り番を買って出た。

手元にはFランクの魔石が二つある。

これは家には持ち帰れないので、今回の探索が終わるまでに錬成するか、ゲートで買い取ってもらわないといけない。

 一番気になるのはゴブの装甲だ。

すぐにでも鎧を作ってやりたいが、如何せん素材が足りない。

普通の鋼なら迷宮の小部屋の扉を錬成で溶かしてしまえばいいが、せめてミスリルくらいは使っていいものを着せてやりたいのだ。

一応ミスリルのインゴットは1本持ってきている。

だが盾や鎧を作るにはとても足りない。

そこで俺は、ゴブを構成するパーツにミスリルでコーティングを施すことにした。

Fランク魔石を使い、各パーツの反応速度と魔法攻撃耐性をつけた。

特に木製のゴブに炎の攻撃は怖い。

そこは念入りに処置した。

結果、

【防御力】172→197、【素早さ】40→68、魔法攻撃耐性(小)、火属性耐性Lv.3,

とパラメーターが少し上昇した。

銀ギラだと目立つので、見た目は今まで通り木目調だ。

ぱっと見ではどこが変わったのかわからないだろう。

まさにマイナーチェンジって感じだった。

 魔石を持ち帰れないというのは本当に不便だ。

錬成のために素材を迷宮に持ち込まなくてはならない。

たまに小型のリアカーのようなものを迷宮で運用しているパーティーがいる。

俺も乗り物型、もしくはキャリー型のゴーレムを作りたいのだが、運搬用の荷車を作る方が先だろう。

 さて、残ったFランク魔石だが今回は俺の武器を作ることにした。

さすがにハンドガンだけでは心許こころもとない。

本当はもう少し魔石を集めてから作りたかったが、とりあえず第三階層へ行くための武器が必要だ。

俺はずっと念願だったアサルトライフルの制作に取り掛かった。

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