破章

止まらずに坂を下っていると一人小さな、小さなこどもに出会った。

「なにをしているの?」

ぼくはたずねた。

「お母さんのために働いてるんだよ」

小さなこどもは、あせをながしながら一歩一歩せっせかせっせかとあるいている。だけど、足がとてつもなくおそかった。

「そのしごとは、ほかのひとにでもできるんじゃないの?」

「ボクは、ボクしかいないんだ。だから、ボクはお母さんのためにはたらいてお母さんのためにしぬ」

小さな子どもはそういいのこしてどこかへといなくなってしまった。その子はどこかほほえんでいた。


また当てもなく坂を下ってると、みどりのかっぱをきたおんなのひとに出会った。

「なにしてるの?」ぼくはみどりのかっぱをきたおんなのひとにたずねた。

「お父さんを待ってるのよ……もう少しでお父さんと私の赤ちゃんが……」

たしかにお母さんのお腹はふくらんでた。ぼくはおとうさんについて聞いてみる。

「おとうさんはどこにいるの?」

「ごはんをとりにいったっきり、帰ってこないの。だから、私は赤ちゃんを産んで死ぬの。この身体じゃご飯も取りに行けないしね……」

「それって、ほかのひとにでもできるんじゃないの?」

おかあさんはお腹をみて、

「私にしかできないの。この子は私とお父さんの子供なの。これは私の使命……この子を産むのが、私に残された使命なの……」

おかあさんは少しほほえんでいた。

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