朝、昼と何事も無く過ごしたが、夜になると円羅は急に胸騒ぎを覚えた。


それも今までに何回かあった程度のものではなく、とてつもなく強烈なものだった。


――しかたがない。


どうやら厄介ごとが自分を呼んでいるようだ。


そこに自ら入っていくことが円羅の勤めである。


円羅は大型のヨーロピアンバイクにまたがると発進させた。



――ここか。


意識が引かれるままにバイクを走らせると、人里はなれた郊外に着いた。


その先に廃墟がある。


そこが彼を呼んでいるのだ。


――鬼が出るか蛇が出るか。


円羅はバイクに取り付けてあったフレイルを取り出した。


フレイルは長い棒と短い棒を鎖で繋いだ物で、もともと農耕器具から武器へと発展したものである。


類似の武器にはヌンチャクがある。


円羅が中に入ると、仄かな灯りがあった。


光源はどこだかわからない。


薄暗いことには変わりが無いが、見えないこともない。


――何かいる。


奥に何かがいた。二体。

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