4


顔の一部を覆うコリント式兜をもってしても、女の美しさを隠せないでいた。


女がもう一度言った。


「逃げなさい」


その言葉を聞いた巡査は、弾かれるように走り出した。


女は巡査を見送ると、吸血鬼のような男に言った。


「食事中のところ、邪魔して悪かったわね」


「おまえ誰だ」


「でも食事なんてもう必要ないのよ。あなたは今ここで死ぬのだから」


 それを聞いた怪人が動いた。


一瞬の間に女の前に移動すると、その両肩を掴み、そのまま首にかぶりつこうとした。


が、女が手にしていた日本刀がくるりと回った。


そいつの動きが止まった。


女が軽く押すと、そいつの首がころりと落ち、その身体もゆっくりと倒れた。


女は倒れた怪人に手をかざした。


「ハッ!」


すると怪人の体が炎のようなものに包まれた。


ただその形状や動きは炎に似ていたが、その色は紫であった。


紫の炎はしばらく燃えていたが、やがて消えた。


すると倒れていた怪人の身体も跡形も無く消え去っていた。


女は血まみれで倒れている女を見たが、やがて小さく呟いた。


「目撃者がいるから、あれは今更どうしようもないわね」


女はそのまま倉庫を後にすると、闇の中に姿を消した。

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