神楽咲く

ツヨシ

神楽咲く

灯りがついている。


見回りの途中で気づいた。


去年閉鎖になった倉庫。


打ち捨てられ、電気も来ていないはずなのだが、何故か明々と内部が照らされているのだ。


――なんだろう?


巡査は入口まで歩を進めた。


入口の戸を引くと、それは何の抵抗もなく開いた。


中に入ると、何かいた。


見えたのは床に倒れている女性。


そしてその女性に覆いかぶさるような体勢で背中をこちらに向けている男性とおぼしき者。


巡査が近づこうとすると、その男性と思われるものが立ち上がり、振り返った。


立ち上がりかけてから振り返るまで、一秒とかからなかっただろう。


とても人間とは思えない動きであった。


そしてその容貌も、とても人間とは思えなかった。


耳の先端は大きく尖っていた。


口は耳まで裂け、上と下から太い牙が二本ずつ生えている。


口の周り、特に顎のあたりを彩る赤は血だろうか。


見れば倒れた女性の周りも赤く染まっている。


大きな目は真っ赤で、しかもぼんやりと光っていた。


「なんだ、人間か」


そいつが言った。日本語だ。


「面倒だから、殺すか」

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