同棲してる男の娘が幼馴染でヒロインなんだ。
@aobasan
第1話 風邪引いて看病されたら、今度は看病するってよくあるよね?
「男の娘」ってのは、意外と見つかるのかもしれない。ってのが、あいつと出会った時の感想。
ガキの頃からサブカルチャーに興味深々だった俺は、もちろん「男の娘」ってのが何なのかは知っていたし、同性愛ってのも一定の理解がある。まぁ、昏睡させてレイプするのはいただけないが。
何で、こんな事を言っているのかというと、俺は今非常にマズイのだ。
俺を挟んで睨み合う女の子二人、ここまではいい。だって、浮気したとかそんな修羅場ならこんな感じだろう。だが、そんな甘っちょろいものではないのだ。
左側には一見ロリっ子だが、立派な社会人をしている俺の後輩、羽海野絵梨(うみの えり)
右側には黒髪ショートボブのモデルの春ちゃんこと幼馴染、香久夜春香(かくや はるか)…見た目女の子、だが男だ。
何つーカオスだ…
羽海野、言いたいことは分かるが、何で俺の部屋にいるんだ…
「先輩は黙ってて欲しいなぁ」
「そうだよ、いいから黙ってて。」
だってココ俺の部屋…
「…じゃあ、何でこのクソ野郎がこの部屋にいたの?」
あー、それは…まぁ…いろい「同棲してるからね、当然の理だよ。」ろと…おい、春香…
「一体どう言うこと?」
答えろ、さもなければ殺す…みたいな目でロリっ子が見てくるってのも、一部のマニアには売れるかもしれない。
まぁ、春香と同棲しているのは簡単な話で、私生活がめちゃくちゃな春香の上京を同じく上京した幼馴染の俺に押し付けようって話になって、そしたら春香が俺とシェアルームするって言い出したんだよな、あれからすでに8年は過ぎてる。と言うことは俺は春香と7年半シェアルームしてんのか…しかも相変わらず、賃貸料は俺持ちだし…まぁ、春香が料理だけはできるってのが唯一の救いだな。
こんな話を軽く職場の後輩に話す。
そもそも、何でこんな話になったのかといえば…
「せんぱぁーい…もうダメです…運営暇でずぅ…」
そう泣き言を言う羽海野…確かにこの寒い中、歩きもできない運営の仕事は苦痛だろう。俺も去年はコートすら着てこなかったから次の日風邪を引いてしまったほどだ。まぁ、今年は羽海野に忠告していたのだが…
「先輩のコート暖かいです…」
忘れやがったんだよなぁ、このロリっ子…
ゲッホゲッホ…
で、風邪引いたんだよなぁ…
それで罪悪感を感じたらしい羽海野は、看病をするために俺の部屋を訪れたらしい。そこで春香と出会ったが運の尽き、我が家に連れ込まれたのだった。哀れ羽海野…南無三。
「まぁ、君は帰っていいよ。彼の看病は去年と同じ僕がやらせてもらうよ。」
「で、でも!」
「ほら、もう夜だから、子供は帰った帰った…」
「子供扱いするな!」
こうして羽海野は帰ったのだが、何やら春香の様子がおかしい…さっきから天井を見たり、キョロキョロしたりと変な動きをしているのだ…お粥作りながら。
ピンポーン…
「出てくれるー?今手放せないんだ。」
分かった。
今いきまーす。
インターホンの通話を押してマイクに話しかける。カメラには見知った顔が映っていた。
ガチャ、ドアを開けると訪れた女性は小さく手を振った。
「やっほー。」
いやぁ、助かりました。奈穂美さんが来てくれて…
「やっぱり…魔窟になってた?」
なって…ましたね。
「それなら私の出番だもんね、何より自分の担当の私生活も守らなくちゃ!」
この人は安芸津奈穂美(あきつ なほみ)さん…上京してから、生活のイロハを教えてくれた師匠でもあり、面倒見のイイお姉さん的な存在である。そして、この人は春香のマネージャーさん…いつも魔窟になっている春香の部屋の片付けを手伝いによくこの部屋にやってきてくれるのだ。今回も元々は春香の部屋掃除を二人でやる予定だったのが、俺が風邪を引いたので看病してくれるらしいのだ。だから春香は焦ってたのか…納得した。
春香は、作ったお粥をレンゲに掬い、俺の口元に持ってきた。
「ほら、食べてくれないのかい?」
いや、冷ませよ。
「しょうがないなぁ、今回だけだよ」
ふぅーっ、ふぅーっと可愛らしく口元をすぼめながら息を吹きかけながら春香はこちらをチラチラと覗いてくる。変な奴だな、器用にも程がある。
どうしたよ?
「別に…ほら、あーん。」
あーん。うん、お粥だな。美味い。梅の塩気と、お粥の米の甘味が合わさって…OCです。
食べた後、俺はゆっくりと眠りについた。
突然だが、俺は夢を売る手伝いをしている。まぁ、簡潔に言えば、同人誌即売会の運営等行うイベント会社に務めているのだ。
この仕事はやりがいもあるし、辛い時もある。でも、職場が明るいこともあってか楽しく仕事している。
などと、現実逃避をしている俺だが、今…横にすっぽんぽんの男の娘がいるのだ。男の子じゃないぞ、男の娘だぞ。間違えるなよ、間違えたら俺がショタコンとかになっちまうし、そもそも、俺はホモじゃない。
まぁ、ここまではいつも通りだ。いつも遊んでいた春香の裸なんてしょっちゅう見てたし、別に欲情なんかしない。でも、おかしいのだ。何がって?気付けよ。酒も飲んでいないのに脱ぐなんて大人がやることか?しかも冬場に、いくらコタツの中だからって、それはあまりにも挑戦的だろう。
と言うことは、あれか?事後なのか?いや、そうではないと思いたい。そうだ…あれだよ…春香も疲れてるんだよ…そうだ…そうに違いない…
「んんぅっ…あれ?おはよう。早いね。」
あは、あはは…
春香…何で裸なんだよ…
「あぁ、そのことかい?それなら、ただ単に暑かっただ…ヘックチュッ!」
なんだ、そのくしゃみ、可愛いじゃないか。
はぁ、と言うことは今日は俺が看病か…とりあえず奈穂美さんには言っとく。
「うん。よろしく頼むよ。」
そう言って少し咳き込む春香は顔も真っ赤で、辛そうだ。
面倒くさいので俺の布団をそのまま春香に明け渡す。
さっきまで体温で温めていたのでちょうどいいだろう。
しかし、現在時刻4時…元気になり過ぎだろ俺…
さて、お粥の用意しとくか…あ、スポーツドリンクあったかなぁ…
そう思いながら、奈穂美さんにメールを打ち、時間指定で送信しておく。指定時刻は6時30分、奈穂美さんが起きる時間ちょうどだ。内容は春香が体調を崩したことと、昨日のおかげで風邪が治ったことの感謝の文だ。
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