第一章…「その、小さな者達と。【3】」


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 私の勝手なイメージだけど、孤児院というのはあくまで家であり、学校ではないし、それに金銭面も裕福ではないという勝手な想像があった。

 あと、大きくても保育園とか幼稚園程度の大きさでしかないとも思っていた。

 でもそんな想像とは裏腹に、私が今いる孤児院の建物の裏、そこにある子供たちが遊ぶのにも使っている運動場だが、200メートルのトラックは簡単に入るだろうという広さで広がっている。

 保育園幼稚園というより、ここは学校と言った方が広さの説明がしやすいだろう。

 保育園程度の大きさの家に、学校並みのグラウンド。

 この場合、学校は都心とかそういった所にあるモノではなく、地方の学校だ。

 子供がやるなら野球も出来てしまう広さ、基本的に石畳なのは、この世界の常であり、残念な所ではあるが。


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 そんな場所で…、観客が同い年とかオッサンオバサンとかから一変して、可愛らしい子供達となり、私はイクシアにしごかれていた。

 子供達の遊び場を奪ってまでやる事か!…と、思わず口に出してしまいそうになる。

ガキイイイィィィーーーンッ!

 やり始めてそんなに時間も経っていないというのに、早くも4本目の武器を失って、私はイクシアにその大きな槍斧の刺先を首元へ突きつけられていた。

 魔力で作られた得物とはいえ、その重量は本物と変わらないはずなのに、彼女は槍斧を右手だけで操り、気付けば自分の武器が手から消えている。

「最初から飛ばし過ぎ…じゃないかな?」

「手加減から始まる戦闘なんてないっての。もう一回」


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 槍斧を引っ込めて、私に新しいパロトーネを投げ渡す。

 訓練をしてくれるのはありがたい…、ありがたいのだけど、そのペースが早過ぎててんやわんやだ。

 やり続けるけど何から手を付けていいのか、今起きた事を頭が理解する前に次の戦いが始まって記憶しようとしたモノが上書きされる。

 まさに鬼だ。

 戦場で戦う時、相手を倒すのに必要とされるのは速さと力、相手に考える暇を与えず、相手にとって優位な状況を作らせない事、頭で考えてから行動してたんじゃ遅いらしい。

 頭が答えを導き出すよりも早く、体が答えとなる行動を取れるように…。

 イクシアが言いたい事は自分なりに分っているつもりなんだけど…。


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「そう簡単じゃないな」

「なんか言った?」

「いや、何も」

 私はイクシアと距離を取るように下がり、投げ渡されたパロトーネに自分の魔力を流し込む。

 そして、手にパロトーネが膨らむような感触が伝わってきた時、手を開けば…、瞬く間に膨張して剣の形に姿を変えていくパロトーネがそこにはある。

 剣身は、他の兵が使う剣よりも長く、そしてその幅も大きい。

 初めて自分で剣を作れと言われて作った時、何の失敗も無くこの剣が出来上がった。


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 これはパロトーネで作られた偽物の剣ではあるけれど、とても手に馴染む…。

 初めて作った時、それはフェリスが使い込み、そして戦場を戦い抜き…生き抜いた剣、それを作り出したんだ…と、その瞬間にパッと理解できた。

 フェリスの記憶は無くとも、話し方だとか感情だとか、染み込んだモノまでは消えていない証拠の1つがそこにはあった。

 イクシアに勝てなくても、負けていても、戦えるのはそれが理由、染み込んだ記憶、経験があるからだ。

 それが無かったら、恐らく戦う事を拒否していただろう。

 勝てる気がしないのは今も昔も変わらないが、でも勝てるという自信は常に胸の中にあった。

 後はそれを引き出すだけ…何だけど。


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ガキキィィーーンッ!

 力を発揮できずに、攻撃は弾かれ、次の攻撃の隙を与えてもらえず、後はひたすら防戦一方。

 先手をくれる辺り、イクシアなりの優しさを感じるけど、長続きせず一瞬で体勢を崩される。

 フェリスの体は反射神経がいいのか、よほど戦い慣れているのか、とにかく動けてしまう。

 何かを考えるでもなく、ひたすら防ぎ続ける行為、とにかく頭を使わずとも動く事を止めなければ…諦めなければ、ギリギリな事に変わりはないけれど続けられる。


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 でもそれだって長続きはしない。

 現状の答えは至極簡単な話だ。

 フェリス・リータという強者の力を引き出せないから負ける。

 全てが私のせいってやつだ。

「っ!」

 のけ反り、倒れそうになる所を何とか堪えて、迫ってくるイクシアに向かって剣を振るう。

 格闘技類の経験なんて、学校の授業で習った柔道程度、そんな俺が頑張った所で、イクシアに勝てる訳がない。

 でも、今ここにいるのは私…フェリス・リータだ。


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 夢だとか、現実だとか、訓練だとか、本番だとか、そんなものは頭から吹き飛ばして、今ここにいるのは、ただがむしゃらに剣を振って何かを掴もうとするド素人とも玄人ともいえない雑魚だけ。

 イクシアが距離を取るために後ろに跳ぶのに食らいつくかの如く、踏ん張って、力強くその懐へと跳び込む。

「タアァッ!」

ガキイイィィーーンッ!

 あと少しという所で槍斧に防がれるものの、私は攻撃の手を緩める事はなく、一手、二手と攻撃を出していく。

 あの攻撃がダメなら…、これがダメなら…。


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 焦りが頭を過っては消えていく。

ガキンッ! ガキンッ!

 両手で剣を振るう私に対して、その攻撃を受けているイクシアはその槍斧を両手で持つ事を一切しない。

 それが一種の彼女の戦い方…、人種と竜種のハーフである彼女は、左手にその特徴が色濃く出ていた。

 イクシアの左手は、指先から二の腕の途中までが、人のそれとは違って竜の特徴が大きく出て、竜の腕と言ってもいい状態になっている。

 上等な鎧なんて目じゃなく、それを凌駕するほどの硬度を持つその腕は、彼女にとって武器や防具以上に頼りになる矛と盾だ。

 剣で攻撃してもその手であれば軽々と防ぐし、それで殴られた時には甲冑だって平気で凹んで怪我をするし…。


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 だからイクシアは左手がいつでも自由に動かせるように、大事な時以外は左手で武器を持つ事はしない。

 現状、過去を遡って見ても、私と戦っている時にイクシアが両手であの槍斧を持った事はなく、おまけに防御に左手を回す事すらしない。

 連続で攻撃する中で、僅かに出た大振りな攻撃…、それはほんの少し相手に余裕を与える一振りだ。

 私が急いでその失敗を補おうとした時にはもう遅い。

 僅かな余裕が生んだイクシアの攻撃が、私の次撃を跳ね返す。

ガキイイイィィィーーーンッ!

 得物を離すまいと強く握るせいで、体が剣を追いかけるように後ろへと持っていかる。


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 体がバランスを保とうと、数歩後ろへ後退するのに合わせて、イクシアが槍斧を振り下ろす。

 万全な体勢なら何の事はないその大振りな攻撃を、体をよじって横を向く事で避けるが、そのせいで余計に体勢を崩し、そこへ追い打ちをかけるようにイクシアは槍斧を私に向かって振り上げる。

 そして、今度は防ぐ事も、避ける事もできず、見事に喰らって何メートルも後ろまで叩き飛ばされるのだった。

 青い空、固くて…熱くなった石畳の感触が背中いっぱいに広がって、負けた事の実感をより一層感じさせてくる。

 体に残るのは痛みではなく、とてつもない脱力感。


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 気持ち的な問題ではなく、イクシアの攻撃…あの武器による効果だ。

 本物の武器でない分、やられる側に怪我がないように作られたモノ。

『フェイスお姉ちゃん、弱~い』

   『よわ~い』

 そして動けない私に聞こえてくるのは、一部始終を見ていた子供達からの純真無垢な槍のような言葉だった。

 できる事なら耳を塞ぎたい。

「私の名前は、フェリス…。フェイスじゃない」

 今、私にできる抵抗はこの程度だ。

 というか抵抗にすらなっていない。

『でも、がんばって~!』


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 純粋だからこその言葉も棘はあるけど、そこから発せられる応援もまた本気、その言葉に涙が出そうになる中で、そんな私の傷心を癒してくれるのは、孤児院内で一番幼いトーリだった。

 自分の妹と歳が近い事もあって、嬉しさもあれば、若干の気恥ずかしさにも襲われる。

『なんだよ、チビッ子。ウチには応援無しか?』

 そこへ、不満げに頬を膨らませたイクシアが来る。

『い~や』

 しかし、イクシアの要求とは裏腹に、トーリはプイッと顔を背ける。

『何を~!』

『い~や!』

 トーリの対応に、イクスアは両手を上げて、恐らく「怒ったぞ~」的な感情を表現しているのだろう行動を取る。


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 爪を立てて引っ掻くような素振りも伺わせた。

『にげろ~!』

 それを見たトーリは、鬼ごっこの始まりと言わんばかりにイクシアから逃げていき、釣られるように残りの子供達も一緒に逃げていく。

 イクシアも、気分が良いのかなんなのか、それに付き合うように走っていった。

『待て待て待て~!』

 そんな彼女の後姿を見届けて、その場にただ1人取り残される私は、訓練が休憩に入ったのだと勝手に解釈をして、脱力感が残る中でさらに体から力を抜いた。

 むしろ休憩をさせてほしい。

「・・・」


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 ここに来た理由がこれだった。

 場所が変わればやる事も変わる…、そう思っていたのは私だけで、船に揺られて行きついた場所では、いつも通りの戦闘訓練が待っていただけだ。

 もっと詳しく説明をするなら、何でもいつも使っている場所はしばらくの間、軍の方で使われるらしく、その間も出来る場所を探していた結果、ここに行きついたんだと。

 もちろん、フィアが説明してくれた通り、環境を変える事でフェリスの記憶に刺激を与えて、それを呼び覚まさせようという目的もある。

 私としても、フェリスがどういった女性なのか興味はあるし、知る事が出来るならそうしたい。


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 そして、フィアがメインで説明したモノとは違うサブがこの訓練、目的としては二の次だが、この島の軍基地には後日行く事になっているから、現状達成する事ができない。

 要は現時点でやる事がない。

 だから訓練をしよう…、単純な話だった。

 まぁ、やらないといけない事の1つではあるけれど…。

「あんた…、雑魚雑魚ね」

 そんなこんなで、私が体の回復を待ちがてら休憩していると、シュンディがやって来て、頭上から私を覗き込んできた。

 正直、冷や汗モノである。


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 初対面の相手に平気で蹴りを入れてくる子だ。

 万全な状態ならともかく、体が動かせない状態で来られれば恐怖しか感じない。

「な…何の用かな?」

 そんな状態で、打てる手も無く、だから私は少々引きつりつつも笑顔を向けてシュンディに質問をする。

「別に…」

 無表情のまま、シュンディは答える。

「今の私は話し相手ぐらいしかできないけど…」

「・・・」

「・・・」


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 敵対心を向けてきている事がわかっているせいか、何を話せばいいのかがわからない。

 敵対されていなかったなら、何かしら聞く事ぐらいできるだろうけど…。

「動けない相手を殴ったら、それはただのイジメ。だから僕はそんな事しない」

「そう…、それはありがたい…」

「で、動けるようになるのはいつ?」

「え~…、やる気満々じゃない。私、そういう事は良くないと思うな」

「敵だから…、やれる時にやる」

「それは怖い…」

 リアルと一緒なら、子供が孤児院に預けられる理由なんて、明るい話ばかりである訳がなく、何でこうも敵対心を剝き出しにしてくるのか…気になりはするけど、それと同時に聞ける訳がないと考えるまでもなく結論がでる。


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 だから、彼女と友好関係を築く手立てが不足していた。

「というか、私が自分の意思とは関係なく動けないってよくわかったね」

「近くの基地の訓練とかよく見てるから、あの武器がどういうモノかも知ってる」

「それは凄い。シュンディちゃんは勉強熱心なんだね」

「う、うっさい! それで、動けるようになるまであとどれくらいなの?」

「それを言ったら、あなた見計らって攻撃してくるじゃない」

「当たり前」

「それだったら動けるようになるまで、それか動けるようになっても、このままジッとしていた方が私の身は安全。そうでしょ?」

「・・・」

「どうして私から狙われているのかな?」


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「群れを叩くなら弱いモノから…。狩りの常識じゃん」

 私は野生動物か…。

 狩りなんてした事ないし、そもそもこの世界に狩りができる環境があるのかかわからない、とりあえず人を狩ろうとするのはどうかと思う、というか、今の言い方じゃ、一番私が弱そうだったって事じゃないか。

「・・・。あなたにその気があるかは置いておいて…、着実にその言動が私の心という心臓にダメージを与えているわ」

 イクシアはともかく、見た目でフィアよりも弱そうって思われたのはショックだ。

 背も高いし、大人びてるし、私の方が強そうに見えると思うんだけど。

「一応聞くんだけど…、なんで私が一番弱そうに見えたのかしら?」


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「そんなの決まってるじゃない。一番覇気がなかったから」

「それはまた漠然としたものを…」

「本当だったらあのイクシアって人を最初の獲物にしようと思ったけど、無理。あんなの勝てるわけない」

 そう思える正常な思考を持っているのなら、もう少し考えて行動をしていただきたい。

 一応力量を見てから相手を決めている辺り、馬鹿ではないようだが、悲しい。

 何が悲しいかってのは、こんな子供がこんな行動を取る事と、一番弱いと子供に言われた今の心境だ。

「そろそろ動けるようになったんじゃない?」

「え?」


---[82]---


「動けてもジッとしてるって言ってたし、実はもう動けたりして」

 言葉でも怖い事を言っているけど、私はそれよりもしゃがんで覗き込んでくるシュンディの笑顔の方が怖い。

 というか、本当に動けない。

 いや~、怖い。

 本当に恐怖を覚える。

「あ…」

 何かを実行する気満々、そう感じ取ったが、予想外な方向から体に衝撃が与えられた。

「ゲホッ!?」


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 その瞬間、体が咄嗟にダメージを軽減しようと動いた事で、私の事を動けないようにしていた体に纏わりついていた魔力が、体から剥がれ落ちる。

 お腹へと思いもしない衝撃が襲い、予定よりも早く動けるようになりはしたが、無防備なお腹への攻撃は、瀕死行きレベルの大打撃を私に与えていた。

 頭の上でチカチカと何かが弾けているかのような、とにかく頭の中が混乱状態だ。

「な…、何が…」

 朦朧とする意識の中で、自分のお腹に衝撃を与えた物体を確認する。

 小さい体に鱗、それを見て誰かはすぐにわかった。

「ト、トーリちゃん?」

「ん?」


---[84]---


 自分の名前を呼ばれてジト目を向けながら頷く幼女。

 どうやら、イクシアから逃げに逃げて、ここにたどり着いたようだ。

『追い詰めたぞ、チビッ子~っ!』

 そこへ、さっきシュンディと一緒にいた男の子、キントとノイを両脇に抱えたイクシアが戻ってきた。

「さぁ~、ウチの事を応援してもらおうか~っ!?」

「まだやっていたのね」

 今のイクシアはツッコミでも待っているのだろうか…。

 さすがに、本気で応援をしてもらおうとして、こんな事をやっている訳でもあるまい。


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 少々体がふら付くものの、トーリを抱きかかえたまま私は立ち上がる。

「怪我はない?」

「だいじょ~ぶ」

 私に乗ってきた…のではなく、転んだ先に丁度私がいたような状況…だと思うけど、一応トーリが怪我をしている様子はなく、大丈夫と本人も言っているのなら、これ以上の心配は無用なようだ。

「いって」

「行く? どこへ?」

 唐突に言われるトーリの指示に、私は首を傾げる。

「おうえんおばけにつかまると、まけ」


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「・・・。へ~、応援お化け…ねぇ~」

 応援お化けなどとよくわからない名前を付けられ、それがあいつだとトーリに指を指されたイクシア。

 トーリの指差しに釣られるように、応援お化けに視線を向けてしまうと、その張本人はやっている事を正さず、その顔が赤くなっていくのが見て取れた。

 彼女だけなら、この状況でも子供と遊んでいるだけで済んだのかもしれない。

 しかし、そこへ私が参加する事になり、自分のやっている事に気付いて、今更ながら恥ずかしくなったようだ。

「はやく、つかまっちゃう」

 服をクイクイと引っ張られ、私は苦笑いをイクシアに向けつつも、唐突に湧き出てくる幸福感に胸を踊らされた


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「では行きましょうか、トーリ姫。応援お化けに捕まる前に」

「よきにはからえ」

 正直、場の空気に乗せられた感はあるけれど、小さい子が遊んでいて、それに巻き込まれた時、私はそれを拒絶する事は出来ない。

 自分にとって、子供と遊ぶ事が当たり前だったから…、でもその当たり前ができない事が多くて…、その反動とでも言うのだろうか、この状況が楽しくてしょうがない。

 フェリスとしてやる事が多い身、この世界での家族に会えるのも、そんなに多くないのだ。

 だからこそ、この瞬間が嬉しくてしょうがなく、気も紛れるというもの。

 さっきまでの出来事なんて、一瞬にして頭の外に吐き出された。

「じゃあね。応援お化け」

 両手が塞がっている私の代わりにトーリが手を振って、応援お化けから離れるように走り出す。


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「ちょっ!? フェリ!」

 自分を呼ぶイクシアの声に、少しだけ顔を向けて笑みを向ける。

「まてっ、こらーっ!? フェリーッ!」

 その笑みを挑発と受け取ったイクシアは、負けじと私を追いかけ始める。

 その両脇の男の子2人が悲鳴を上げている事に気付いているかどうかはわからないが、猛烈な追い上げで距離を詰めてくる。

「ははっ」

 思わず笑みが零れる。

 そして状況が変わるだけで、ここまで気持ちが変わるのかと驚いた。

 イクシアとの訓練となると、気持ち的に重くなる事もあったが、この瞬間はイクシアが居てくれてよかったと正直に思ってしまった。


「今日は一段と賑やかね」


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 夕食の準備を終え、それ以外のあらかたの雑務が終わったトフラは、思わず思った事を洩らす。

 その表情は我が子を見つめる母親そのものだ。

「はしゃぎ過ぎるのも考えものです」

 その隣には、友が子供の用に追いかけっこをする姿に戸惑うフィアがいる。

「ふふ、人はいくつになっても子供。それにどんな立場、状況になっても童心忘れるべからずですよ」

「そ、そうですかね…」


 興が乗ってしまったこの状況は収まる事を知らず、子供達の夕飯時まで続いた。


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 いつの間にか、私とイクシアとで別々のチームが作られて、トーリ姫軍と応援お化け組なんて名前まで付けられる始末。

 全てが終わった後、子供達は満足したものの、その様子を見ていたフィアからは、はしゃぎ過ぎと叱りを受けてしまった。

 遊ぶ事は悪くないけれど、もう少し軍人としての威厳というモノを子供達に見せてほしいのだそうだ。

 ごもっともな言い分で、こちらとしては素直に…はい…としか言いようがなかった。


 溜まっていた何かを吐き出すかのように遊んだその日は、気持ちの良い疲労感と共に終わっていった。


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