第15話
いつでも死というものは、訪れる前に丁寧に挨拶などしてくれない。唐突で、短く呆気ない。コーロの妻から得たものが、コーロとの別れも漏れずに、予期せず訪れた。
グラスに濃厚な色のワインが注がれ、倒れたら透明だった。そんな感覚だ。
「少し出てくるよ。しばらく外に出なくてもいいくらい食べ物を持って帰る。」コーロは所々毛の抜けた頭で、少し笑い出て行った。彼の、感情が揺れると頭を掻く癖の産物だ。(本人は知らないだろうが、私はその癖をとても気に入っている。なんとも滑稽であり、チャーミングだ。)
その頃の彼は、物を食べることも、遠くに行くことも億劫になっていた。
それでも自分で動かなければ死んでしまう。
以前、私が世話をしようとしたら「君の料理は食えたものじゃない。」と食べてはくれなかった。味覚の違いだろう。私も彼の料理は食えたものじゃないのだから。
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