謝罪詩編集

やましん(テンパー)

第1話

下宿のおばさんに・・・・・


あなたは、人生の大きな一里塚

何も知らなかった、この僕の

世間についても

社会についても

そんな僕を受け入れて、よくぞ支えてくださいました

卒業の時

ぼくは、あなたに、折々の手紙を出すと約束しましたね

でも、一回だけ出したお便りは

戻ってきてしまいました

たぶん、宛先を正しく書けなかったから

あなたは、おいごさんの家にお引越しされたと聞いていましたが・・・

うまく手紙が届かなかったのです

これは、本当なんですよ


ああ、でもぼくは、その先を求めなかったのです

なぜ?


そのあと一度、懐かしい下宿の前までも、尋ねて行ったのです。

でも、お留守だった。

ああ、でもぼくは、その時も、その先を求めなかったのです


なぜ、僕は、いつも、その先を求めないのか

それは、怖いから

それは、絶望につながるから

その先は、もう前が見えなくなるから

誰もいないから

それとも、自分が、あなたが、傷つくだけだから


おばさん

あなたは、ぼくが戸惑っている間に

あちらの世界に旅立ってしまわれましたね

ご近所の、行きつけのお店で聞きましたよ

あなたは、あのあと、再び、懐かしい下宿に帰ってきておられたと

時々、アイスクリームを買いにきていらっしゃった、と

その来るべき時の、ほんの少しだけ、前まで

ああ、ぼくはアイスクリームを買って行って

あなたと一緒に食べるべきだったのです

もう少しだけ、その先を求めるべきだったのです


ぼくは、今も、その先を求められずにいます

いえ、その先を消してさえしまったのです

でも、その先がなくても

今には、ほんのわずかの希望が芽生えたのです

そう、ここにまだいる僕の

今の瞬間だけにしかない、わずかな希望なのです

それは来るべき日への、希望なのです。


あなたに深く感謝し、謝罪します

いつの日か、まっすぐに、お詫びすることができる日まで

                 永久(とわ)に安らかに  

































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