40話「ロリへの愛は世界を救うか?⑫~隠し部屋見つけた~」

ネタバレ全開ver

http://suliruku.blogspot.jp/2017/02/40.html


★★★

ダンジョン学園は、悪徳都市の南側にある。南門からはすぐに行ける位置だ。何万人という冒険者の卵が通う教育機関で小都市に匹敵する設備を誇る場所は……今、人が死んでゴールドアップルと交換される戦場になっていた。警察や米軍の姿はない。あるのは死んで食の神に食われ、高級食材と化した美味しそうな遺体が転がりまくっている。

恐らく、一般回線が麻痺しているのは、魔族側の電子的なテロが原因なのかもしれない……。

この戦場での最大の問題は――


「なんか来たぞ!」「魔物か!?冒険者か!?」「とりあえず俺たち以外は全員殺せ!」「余所者は食べ物になれぇー!」「食べちゃうぞー!」


誰が敵で、味方なのか分からないから……学生同士で激しい乱戦になっていた。教員や生徒があっちこっちに立て籠もり、近づいた奴を敵と見做して攻撃する有様である。

時折、立て籠もった建物が大爆発を起こし、高級食材が焼かれる良い匂いがして、冒険者の心を恐怖のどん底へと突き落としているように見えた。

考えてもらいたい。誰が敵なのか分からない戦場は、精神に相当のストレスを与える。この状況が長引けば、神経と魂を病んでしまう輩が出そうだ。

21世紀の頃なら兎も角、現代社会は脳みそがぶっ壊れても、魂があれば蘇生できるから、特に問題ないように見えるが、今まで蓄えた人生経験を一部ロストするし、低レベルの冒険者なら、魂ごと食の神に食われてしまうから、誰も彼もが、それなりに本気でバトルして――俺も白真珠も乱闘に巻き込まれている。

校舎をちょっと車で通り過ぎるだけで――


「「爆裂弾(ボム・ボール)!」」「「誘導弾(イヴァル)!」」


数百個の魔力弾と、爆発する真っ赤な塊が俺がいる方向へと飛んできた。爆裂弾は何かに接触したら大爆発を起こす仕様だから、このままだと俺の命が危ない。

だが、この魔法には他にも欠点があったりする。誘導機能があるせいで――風の影響を受けまくるくらい低速なのだ。強風が起きれば――たちまち呪文を唱えた術者を殺傷するウンコ魔法と成り下がるのである。


「暴風衝撃波(ストームバースト)!」


俺は暴風を巻き起こす魔法で、迫りくる魔法の数々を強引に跳ね返す。白真珠を抱きしめていたおかげで、無駄に凄い暴風だ。爆裂弾は来た方向へと帰り、術者や地面、建物に接触して爆発を巻き起こす。

だが、遠くへと落ちた誘導弾が再び浮かび上がり、俺達がいる方向へと進み始めた。誘導弾は魔力が尽きるまで狙った標的を追い続けるという厄介な特性がある。

しかし、魔力を消費して進むから……俺と白真珠が車で走りまくって、有効射程内から逃げ切れば無害化するのだ。

俺達が逃げるように向かう先はクエスト部。爆破テロの被害にあった建物だ。きっと、そこに遮断装置のありかを示すヒントがあるに違いない。しかし、焦っている白真珠が愚痴った。


「遮断装置はどこでしょう……なんかあっちこっち戦っていて、やり辛いです……こういう戦いは大嫌い……」


「きっと、遮断装置は米軍の海兵隊辺りが守っているはずだ!あの国は司令部より、核兵器や遮断装置への警戒を最優先にしていると聞く。米軍最強の部隊が居ると考えれば……まだまだ時間はあるはずだ。軍用の回線が生きていれば、援軍もくるだろうし」


「……えと、お師様と海兵隊、どっちが強いですか?」


「そりゃ海兵隊だろう。超一流の戦士相手に勝てる奴はそうはいないぞ……まぁ、影人間を大量に出して嫌がらせをすれば勝てるかもしれんが、向こうも魔法くらい使えるだろうしな……」


海兵隊はアメリカ最強の軍隊だ。魔族に味方した奴らがどれだけ強くても……いや、待てよ?

そういえばドナルド先輩は――魂を直接傷つける光を生成する精神破壊波(マインド・クラッシャー)を使えたはずだ。僅かでも浴びればダメージが入り、直撃すれば無に帰る可能性だってあり得る。

銃より射程が広くて、下手したら食の神にも当たりかねない最上位魔法だ。やばい。海兵隊の皆さんは返り討ちにあっているかもしれない……小都市サイズのダンジョン学園を乱戦に巻き込む物量を、魔族陣営は投入しているし、物量差で押し切られているかもしれない……。

迅速に、遮断装置がある場所を知る方法は――そうだっ!あの人に聞こう!

クエスト部へと着いた俺は、黒い装甲車から降りて隣の校舎を目指して走った。後ろから白真珠が付いてくる。


「あの?お師様?そっちには何があるんです?」


「校長室だ!」


「はぁ……チーズ校長さんに会うんですか?」


「校長室はドナルド先輩に爆破されたクエスト部の隣の校舎にあるんだ!」


「えと、どういう事です……?」


「恐らく、ドナルド先輩は……クエスト部を爆破して、慌てまくるチーズ校長を追跡して……遮断装置の居場所を突き止めたんだと思う。一番守らないといけない場所だから、緊急事態になったら確認しに行くはずだ。

人間は損すると思ったら、積極的に行動する生き物だし……。

それに、クエスト部が爆破された日……ドナルド先輩は選挙事務所の外にいただろ?あれは恐らく――クエスト部を爆破して、遮断装置の在り処を探っていたんだろう」


俺は思い出す。昨日の出来事を――


ーーー

「小さい頃から悪い事を知らないと、良い大人にはなれないよ。特にこの悪徳都市では美しい少女なんか悪い悪い獣たちの餌食さ。

さぁ、こんな所で立ち話をするのも何だし、僕に付いてきてくれ。依頼人を紹介しよう」


「俺を信用する速度が速いですね……数年ほど会ってないのに」


「僕はね、面倒臭い事が大嫌いなんだ。だから、細かくて面倒な仕事を君に押し付けたい。ただそれだけだよ。君がバグダインの刺客だったらさ……この選挙事務所ごと爆破したり、色んな魔法を使って徹底的に攻撃するだろう?」

ーーー


うむむ……『面倒な仕事を君に押し付けたい』とか言ってたな……。

あの時から……俺に悪事を止めて欲しくて、ドナルド先輩の本心がたくさん出まくりだったと思うと悔しくて仕方ないが……さすがに、数年間会ってない人物の内面を、瞬時に推理するのは難しいから、今は気にしないでおこう


「なるほどっ!さすがはお師様ですっ!まるで名探偵みたいですよ!行く先々で事件が起きまくる所が名探偵っぽさが出てます!」


白真珠に褒められた俺は、クエスト部の隣にある校舎へと入り、荒らされた校長室へと突入した。金庫がこじ開けられて、もぬけの殻である。

だが、一番重要なのはそこではない……校長室を出入りして、通路と周辺の部屋の両方を見比べる。そうすると違和感に気が付いた。

通路は糞長いのに――校長室と周りの部屋が狭いのだ。明らかに通路の壁側に隠された部屋がある。俺は空気を思いっきり吸って――


「なんてバレバレな隠し部屋だ!?もう少し隠す工夫をしろよ!?」


「なるほどこの先に部屋があるんですね!時間がないからやっちゃいますよー!」


そう言って、白真珠が魔氷剣で氷のハンマーを作り出して――


「えいっ!弁償代はお師様もちでお願いしますっ!」


壁を紙のように容易くぶち壊した――その壊れた壁の先には――お爺さんがいる。高級そうな黒い和服を着た老齢のチーズ校長だ。21世紀に流行した古いテレビゲームをやりまくりながら、過酷な現実から逃避しているように見えた。

チーズ校長がこちらを振り返り、怪しく――笑っている。


「みたなっ……!この極楽部屋をっ……!」


「校長先生っ!遮断装置はどこですか!」


焦っている白真珠が問いただす。だがチーズ校長からの返事は――


「くくくっ……!教えると思ったかっ……!そんな重要な機密をっ……!教えると思ったかっ……!」


「ま、まさか……アンタも魔族に組みしていたのかっ……!」


俺は校長を叩きのめして道を聞くために、呪文を唱えた。勝率は予想通りに進めば9割くらいありそうに思えたのだ。


「ふふふっ……!ふはははははっ……!馬鹿めっ……!生徒が校長に叶う訳がなかろうっ……!権力的に考えてっ……!」




---


(ノ゚ω゚)(ノ゚ω゚)ちなみにチーズ校長は敵ですか?


(´・ω・`)言動が怪しいだけのモブキャラじゃよ?


(ノ゚ω゚)(ノ゚ω゚)こらぁー!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る