4話「ロリと寝てしまったが、俺はロリコンではない④-ゲス-」




目標となる千ゴールドアップルは余裕で稼げた。

龍水石を提出すれば、お釣りがたっぷりなはずである……と言いたい所だが、あんな目標を設定してしまう学園の事だ。

丸ごと没収という事もありえる。

日本も他の国の政府も、極端に財政が悪化しすぎて、国民の預金にすら税金かけてしまう事態になった事があるのだ。

酷い未来がやってくると想定しながら行動した方が良いだろう。

離婚する夫婦が多いのも、結婚後に幸せな生活がやってくると思い込んで、心の備えをしてないせいだと聞くし……。


「自然豊かですねー、お師様」


隣で呑気にゆっくり椅子に座っている白真珠は、車の外の光景を眺めている。

運転免許証を持っていないロリに、車の運転を任せられないから行きも帰りも運転は俺だ。

途中で見つけた泉で水浴びをさせたから、白真珠の身体からは白濁な液体が取れて綺麗である。

肌が白くてモチモチしてそうで、マシュマロのような胸がとっても大きかった。

俺はロリコンではない。

だが、危険地帯で離れて行動する訳にはいかないのだから、泉の隣で警戒しながら、ついうっかり……銀髪ロリの裸体を視界に収めてしまうのも仕方ない事なのだ。

彼女が白いセーラー服の下に履いているのが、小さなリボンが可愛いピンク色のパンティーだという事も知ってしまったが、決して小さな娘に欲情している訳ではないのである。

白真珠がどれだけエロ可愛くても、恋愛の対象ではない――俺の心を遮るように、白真珠の疑問の声が響いた。


「あ、お師様。髪がない人達がこっちにきますよ?」


「つまり、ハゲか、それは大変だな」


「えと、なんて言えばいいのか……とにかく、髪がないんです?」


「ハゲを差別しちゃ駄目だぞ。

ハゲにハゲと言うと怒るからな。ハゲにだって格好いいハゲとか色々いるだろう?」


「お師様が一番ハゲを差別しているような……ほら、あれです、髪がないです」


白真珠が、草原の遥か彼方を示した。残念ながら俺の視力ではその先にいるのが何なのか分からない。


「……目が良いな。俺には点にしか見えん」


「えへん!視力は両目とも2.0です!」


「視力検査の上限が低すぎて実力を全く反映していない!?」


可愛いロリ娘と会話している間にも、黒い点々が、遠くから近づいてくる。

さてさて……どんな感じに酷いハゲなのだろうか?

白真珠が気になるくらいだし、本当に酷い頭なのだろう……。

次第に近づいてくる黒い点が、人の形に見えてきた。

どうやら彼らはバイクに乗っているようだ。

暴走族が着るような、ぶかぶかの古臭い特攻服を着ていて、難しい漢字がプリントされていて微笑ましかっ。

夜露死苦(よろしく)

愛羅武勇(優)(I LOVE YOU) 

仏恥義理(ぶっちぎり)

走死走愛(相思相愛)

魔苦怒奈流怒(マクドナルド)

凄まじい漢字センスだ。漢字文化への愛がそこにあるように思える。

無駄に行数が多い感じを使う事で、平凡なメッセージに迫力というものを持たせていた。

そして、彼らは昭和時代に誕生したという都市伝説の登場人物そっくりによく似ている。

首から上にあるはずの……頭がない。綺麗さっぱり何もない。


「首なしライダー!?

髪がないんじゃなくて頭がなかった!?

日本語が不自由すぎるぞ!白真珠!」


「すいません言葉足らずでしたよね。

ちなみに、あれはどういう名前の魔物なんですか?」


「現代の便利な乗り物を運用している時点でアレだが、新しい魔物かもしれんな……と言いたい所だが、明らかに魔物ではないぞ。

銃器を持っている時点でな。

窓を閉め――」


ターン!


銃声が響くよりも先に、銃弾が音の壁を超えて飛んできた。

白真珠が指先で銃弾を捕まえて、防弾ガラスを指示通りに閉めてこっちに銃弾を見せてくる。


「銃弾を捕まえました!」


銃弾掴むとか……想像以上に恐ろしいロリだった……。

このロリに手を出すロリコンは、世にも恐ろしい怪力を目にする事になるであろう。

首なしライダーどもは、容赦なく大量の銃弾を次々と打ち込んでくる。

だが、この車両は装甲車。装甲が分厚いから普通の銃弾は怖くない。

窓も防弾仕様だ。問題があるとするなら――


「お師様、凄く反撃したいんですけど……窓あけて良いですか?」


「馬鹿もん、窓を開けたら銃弾が飛んできて危ない。

俺が解決してやろう。バイクのデメリットを奴らに教えてやる」


魔法とは、応用力が全て。

簡単に首なしライダーどもを無力化する方法を俺は思いつく。


「土操術(ノーム・コントロール)」


呪文を唱え発動した。

これは土を操作する魔法。

首なしライダー達の進路上の地面に、大量の落とし穴を作り出す。

地上からは落とし穴は見えず、向こう側は俺が何をしたのか理解してない。

バイクの前輪が落とし穴にひっかかる。

首なしライダー達は前転して無様に宙を飛ぶ。着地地点にあるのは柔らかい土だ。

これではダメージが最小限になるから――


「土操術(ノーム・コントロール)」


もう一度、同じ魔法を発動して、地面を固くして、ギザギザのトゲを生やしてやった。

首なしライダー達は次々と体を打ち付け、骨が折れ、内蔵が破裂し、トゲが刺さり、重傷を負う。

これで無力化は完了だ。


「魔法って凄いんですね!僕、学ぶ意欲が湧いてきました!」


「白真珠は、まず日本語を学ぼうな!」


「ふ……実は文字を読めないとか言いましたが、基礎は大丈夫なんです」


そう言って、白真珠は自身の大きな胸をポヨンっと一回叩いて――


「なんと!ひらがなと、漢字100文字くらいなら覚えてます!」


「お前の学力は小学1年生か!?」


「えへん!さぁ!魔物にトドメを刺しましょう……あれ?」


驚きの声を白真珠が上げた。

首なしライダーから、首……を模した大きな飾りが外れ、人間の頭が露出していた。

そう奴らは……正真正銘の人間だったのだ。

いや、人間でありながら、人間を襲う畜生である。ある意味、魔族よりもタチが悪い。


「よし、トドメを刺すか」


「ま、待ってください!あれ人間ですよ、お師様!

骨を十本くらい折る程度で良いのでは?」


「襲撃してきた時点で、魔物扱いで良い。

恐らく、俺達から成果を奪い取って入学試験に合格しようとする輩だろう。

目標金額が高すぎて、このような違法行為に及んだんだな」


「あの……もしも僕達が負けていたら……どうなっていました?」


不安そうに白真珠が言った。

俺は素直に答えてやる。


「そうだな……魔物の犯行と見せかけるために、殺されていただろうな。

一応、車載カメラは搭載しているが、そんなもんは壊せば良いだけだし。

最初の狙撃の時点で、俺達を殺す気まんまんだ」


「じゃ、とんでもない悪党なんですね……じゃ、退治しなきゃ……」


「おい、待てー!」


とんでもない速度で、白真珠が車から飛び出た。

あっという間に、首なしライダーを演じていた人間達に近づき、至近距離から3発づつ銃弾をプレゼントする。

受け取った側は、当然、身体に穴が開き、絶命していった。

狩る側から狩られる側となったゲスどもは、必死に命乞いをしているが――


「や、やめてくれ!で、出来心だったんだ!

ちょっと襲撃して脅かそうと思っただけなんだ!ジョークだよ!ジョーク!

お嬢ちゃんには分かるよな?」


「反省……しているんですか?」


「ああ、反省しているっ!これからは真っ当に生きるから助け――」


なんて説得力のない発言なのだろうか。

白真珠の真っ赤な目が、憤怒に染まっている。

過去にとんでもないトラウマを背負ってしまったのか、こういう畜生の存在そのものを許せないようだ。


「お前みたいな奴のせいでっ!僕のお母さんはぁー!」


……うむむ、襲撃してきた首なしライダーが1人残らず全滅してしまった。ゲスの身体に穴が増えて絶命している。

白真珠は悪党を始末できて、とっても安心できたようだ。

まるで、自分の存在意義を満たせたかのように、気分が晴れやかな笑顔でゆっくりとこっちに戻ってきている。。

どことなく暗い感情を思わせる笑みをしているが、幼い身で冒険者なんていう荒くれ仕事を目指している以上、過去に何かあったのだろう。


「お師様!悪党を成敗しました!」


戻ってきた銀髪ロリが、無邪気に報告してくる。

俺の返答はもちろん――握りこぶしによるゲンコツだ。


ゴツンっ 


「俺の手の方が痛いっ!?」


ロリ娘だから柔らかい頭だと思ったら、まるで装甲版を叩いたかのような硬い感触がして手が痛かった。

どうやら白真珠は怪力以外にも、身体がとっても丈夫らしい……銃弾を素手で掴める時点で、成長すれば魔族を素手で倒せる猛者になるやもしれん……。


「あ、あの、僕、何か間違った事をしましたか……?」


俺にひどく拒絶されたと思ったのか。白真珠が不安そうに俺の顔を見つめてくる。

深紅色の赤い目が神秘的で綺麗だ。こういう表情を見ると新鮮さを覚える。

もう少し、この表情を見ていたかったが、場に流れる重い沈黙に俺は耐え切れず――


「いや、躊躇なく犯罪者を殺すのは良いんだが……大抵、こういう奴らは犯罪組織とかに所属している可能性が高い。

出来れば捕まえて、警察にプレゼントした方が芋づる式で悪党を制裁できて良いと思うのだが……」


「そ、そうでした!

僕、正義の味方失格かもしれません……。ごめんなさい、お師様……。

今日の僕は役に立ってません……」


俺は手を伸ばし、自信を失った白真珠の頭をワサワサと撫でてやる。

まだ彼女は幼いんだ。しっかりとした大人がちゃんと褒めてやらないと駄目だ。

ここで自信を失ってウジウジされたら……俺の気分が危うい。


「白真珠がどうしてそこまで正義の味方に拘るのか分からんが……人間、誰だって失敗するさ。

あんまりクヨクヨするな。反省は人を成長させるというが、ぶっちゃけ後悔しても時間の無駄だぞ」


「お、お師様の事をお父様って呼んでもいいですか……?」


この熱っぽい思いを込めた白真珠の呼び方に、俺の背筋がゾクゾクッとした。

危ない。これ以上、敬称が進化したら変になりそうだ。

年の割には、銀髪ロリの声はとっても妖艶で、中毒性があって聞いていると癖になる。


「ダメだ、お師様で我慢しろ」


「じゃ、お兄様?」


「上目遣いで言っても駄目だ、ロマンがある敬称だがお師様で良い」


「じゃ、オニィたま?」


「逆に気持ち悪い」


「アニィ?」


「三文字で響きが良いが却下」


「お師匠様!」


「無駄に長くなってる」


「あ、お師様!悪党の死体が光ってます!」


その声で、俺は首なしライダー達の遺体を見た。

食の神が遺体を持ち去り――場には死体は残らない。

1ゴールドアップルの価値もなかったという事だ。

特攻服とバイクなどの生きてない道具だけが場に残った。

残された冒険者バッチの色が。漆黒の黒色から綺麗な赤色へと変わる。

冒険者も魔物も――このダンジョン世界では死体すら残らない。


「大変です!葬式を出せません!」


「いや、遺体なくても葬式するぞ……あいつら」


このダンジョン世界には、とんでもない秘密がある。

俺達がいる場所は、言ってみれば生物の胃袋のような場所だ。

だが、隣に可愛い娘がいると……精神が安らいで、辛い現実から逃避できそうだなぁと俺は思った。




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魔法一覧

http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Kyuuketuki_ha_isekaisaikyou/Mahou.html



爆裂弾(ボム・ボール)


本来の仕様は、何かに当たると大爆発する赤い弾丸。

主人公さんは、自爆ワードを喋らない限り爆発しないように安全な感じに改造した。

クラスター爆弾のように、大量の赤い弾丸に分裂させて、広範囲を一気に爆発させたりと応用の範囲が広い。

近く味方に現在位置を知らせるために、上空で爆発させたり。

地雷代わりに、あっちこっちに設置したりと、大人気である。


※狭い場所で運用すると、魔力障壁をぶち破って術者も被害に合う。







土操術(ノーム・コントロール)


土を操作する魔法。

落とし穴を作ったり、即席の壁を作ったりと応用の範囲が広い。

地下にトンネル作ったり、即席の家屋も作れる。

名前の通り、土の精霊さんにお願いして、術者の魔力と感情を食べさせて実行させている。


※精霊は雑食性  魔族は偏食家設定。どっちも似たような代物

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