2話「ロリと寝てしまったが、俺はロリコンではない②~初めての共同作業~



銀髪ロリの手で学校の地面に生還した俺は、携帯端末を魔法の鞄から取り出してネットへと接続した。

都市の外ではネットに接続できない場所がたくさんありすぎて、得られる情報が限定されるから、情報収集は早めにやった方が良い。


「あの……携帯を見てどうしたんですか?」


無邪気に白真珠が聞いてくる。彼女は背が低いから携帯の大きな画面が見えていない。

俺は小さな娘にも見えるように、場にかがみ込み、冒険者専用サイトを見せつける。

だが――この銀髪ロリは首を可愛く傾げて、疑問を問いかけてきた。


「これ、なんのサイトです?」


「……魔物の情報がないと、効率よく千ゴールドアップル集まらないだろう?

これはそういう情報を有料で教えてくれる素晴らしいサイトなんだ。

冒険者支援学校で最初に習うような事なのに、どうして知らないんだ?」


「が、学校に通った事がないんです……」


「そうか……悪いことを聞いたな……」


どうやら小学校にも通った事がないようだ。

つまり、読み書きができない。

確かにそれなら……冒険者くらいしか職業がないだろう。

日本政府は財政の悪化で、生活保護も廃止している。

経済も極端に悪化……まぁ、若者を10年間も徴兵して、無駄な職歴を歩ませている時点で自業自得なのだが。


「でも勉強できなくても大丈夫です!」


そう言って、白真珠は大きな胸を誇らしげにして


「僕には正義の灯火があるからです!

それがある限りっ!悪党には負けません!」


「一応聞いておくが……どこに正義の灯火はどこにあるんだ?」


「僕の胸の中です!」


うむむ……俺はロリコンではないが……白真珠の胸のサイズはCカップほどありそうである。

小さい背丈に大きなロマンが実っている訳だ。

正義の良さは分からんが、オッパイが大きいのは良い事だと思う。

将来有望な胸だ。


~~~~~~~~~~~~


高報酬が期待できる魔物の情報を、100ゴールドアップルで購入し、地図情報で位置を確かめた。

この頃には、学園のグラウンドはほとんど空である。

絶望して泣き叫ぶ黒バッチ冒険者が二百人ほどいるだけだ。心がへし折れてトラウマができたようだ。

生活保護制度がない代わりに、徴兵制度があるから彼らの面倒は都市や国家に見てもらおう。


「クズっ……!死ぬ気で試練に挑まないクズどもめっ……!」


この校長先生の悪辣な言葉を背に、俺達は学園から出た。

魔法の鞄から、迷彩色の装甲車両を自動操縦モードで路上に取り出して、扉を開けて運転席に俺は座る。

助手席には白真珠が座り、フカフカな革椅子の居心地を楽しんでいた。


「トモヤさん、これ幾らぐらいする車ですか?」


「車の値段か?500万円くらいで安いぞ」


「なるほどなるほど……高いですね」


「魔法の鞄に、同タイプの装甲車がもう一台入ってる。

冒険者なら手軽に買えて、使い捨てにできる量産品だな」


「な、なんて贅沢な!?車を使い捨てだなんて……勿体無いですよ……」


「それよりもお互いの戦力を確認しておこう。

俺は魔法を使えて、持ちネタが多い自由自在のオールラウンダーだ。

白真珠は何ができる?」


俺は車のエンジンを起動して、都市の外へと向けて移動しながら聞いてみた。

白真珠は、元気溌剌に、年相応の子供らしく――右手の小さな握りこぶしを見せつけてくる。


「僕はこの怪力が自慢です!

あと重い機関銃とか使えます!……弾丸を大量消費しすぎて、自動小銃に落ち着きましたけど」


白真珠が魔法の鞄から、自動小銃を取り出した。

ドラムマガジン式の大乱射仕様である。弾倉に100発以上の弾丸が装填されていて、弾幕を展開しやすい代物だ。

だが可笑しい。この銀髪ロリが銃器なんぞに依存しているのは不思議すぎる。


「……おい、白真珠。お前は魔法を学んだ事がないのか?

そんなに魔力が豊富なのに?」


「ええと、はい、僕……孤児院育ちで、魔法とかよく分からなくて」


「あのな、第二層から魔族が出るんだぞ?

物理攻撃無効の化物相手に、魔法なしは死ぬぞ。

一応、人間の身体には魂があるから、殴る蹴るの攻撃は有効だが……魔法を使わない近接戦闘はリスクがありすぎてオススメできない」


「あはははは……すいません。

ところで魔族ってなんですか?」


――俺は驚いて信号無視して、事故を起こしそうになった。

赤信号の交差点を俺の車が突っ切り、大勢の車がクラクションを鳴らして、罵倒してくる。

パトカーが近くに居たら、運転免許を剥奪されそうだ。


「トモヤさん!?信号無視は駄目だと思います!交通事故を起こすのは悪党の所業ですよ!」


「お前は一般常識知らんのかっ!魔族の事は新聞読んでたら知っているはずだぞ!?」


「つい先日まで地球で暮らしてたので……ダンジョン世界の事はよく分からないんですよね……。

生活費を稼ぐためにバイトしたりして忙しかったですし……。

あ、でも、地球だと太陽浴びるだけで辛かったんですけど、こっちの世界の太陽だと何故か平気で最高だなぁと思いました」


そういう問題なのだろうか……?

太陽が苦手とか、まるで吸血鬼のようなひ弱さだ。日光浴は万能の良薬と言われるくらいに健康に良い行為なのに……それを実感できないのは不憫すぎる。

ダンジョンの上に張り付いている謎の太陽は、光っているだけの紛い物で、魔族と似たような生物だが、浴びるだけで骨に必要な栄養素ビタミンDをプレゼントしてくれる素晴らしい代物だ。

恐らく、偽の太陽光が健康に良すぎるから、白真珠はここまで凄い健康優良児になったのだろう。


「……白真珠。自分が住んでいる世界の常識を知らないのは駄目だと思うぞ……。地球とかダンジョン世界とか関係なく、魔族の事は知っているはずだろ……」


「全く知りません。魔族って何ですか?」


うむむ……無駄に自信満々である。頭に詰まっている栄養が、オッパイの方に行ってしまったのかもしれない。


「いいか?魔族とはな……魂だけの生命体だ」


「幽霊さんですか」


「うむ、幽霊が魔界という環境に適応するために進化したのが魔族とか、一説では言われているな。

奴らは主に特定の感情をエネルギーとして偏食する」


「感情……?」


「アメリカでジャンクフードばっかり食べているデブとか居るだろう?

それ以上に奴らは、とんでもない偏食家なんだ。

まぁ……サバンナに住む草食動物の性質によく似ているな」


白真珠が「サバンナ?砂漠かな?」とアホっぽい返答をしてきたが、俺は説明を続けた。


「草食動物が同じ草ばっかりを食べていたらどうなると思う?」


「野草は不味いです。調理しないと美味しくないぁーって川原で食べて思いました。

きっと不味くて辛いです」


「アホかっ!?同じ草を食べていたら、弱い方が死ぬっていう結論が出ないのか!?」


「人類皆平等です、夏目漱石って人がそう言ってたらしいです」


「あの人は、逆の事を言っていた人だぞ!?

人間は平等ではない、勉強しない奴はウンコ的な事を言ってなかったか!?」


「まぁ、トモヤさんって博識なんですね」


夏目漱石さんに謝れ。今頃、あの世で泣きながら銀髪ロリを見て、教育制度が崩壊した現状を嘆いているぞ。

学問を教育しても……10年間も若者を徴兵するから何の意味もねぇーってさ。


「話を元に戻すぞ……サバンナの草食動物は共存するために、特定の部位しか食べないんだ。

草の先端だけを食べるシマウマ、葉だけを食べるヌー、それらが食べ残した部位を食べるトムソンガゼルのように、極端な偏食をする事で対立を防いでいる」


「草って無尽蔵にあるんじゃ……?」


「同じ物を食べていたら、草が減った時に弱い草食動物が排斥されるだろう?

魔族は魔族同士で対立しないために、感情エネルギーの偏食を行って、幅広く色んな種を残して共存してきた種族らしいんだ。

快楽だけを食べる魔族、悲しみだけを食べる魔族、絶望だけを食べる魔族……そんな感じに偏食家だ。

まぁ、米軍さんが80年前に起こしてしまった魔族が、偏食家だらけの変人集団な可能性もある訳だが」


「これだけを聞いていると悪党とは思えないような……?」


うむむ……白真珠は魔物を狩ったことがあるのに、悲惨な目にあった人間達を見たことがないらしい。

俺は子供が聞いてもトラウマが残らないような内容を選んで話す事にした。


「いいか……?

あいつらから見れば、人間は大量の感情エネルギーを吐き出す草なんだ。

しかも、ちゃんと『調理』して大量の感情を吐き出すように生き地獄を味わせてくる。

人間が生きたまま「食材として』料理される姿を想像してみるんだ」


「す、凄く大悪党な気がしました!魔族って悪いやつらばっかりなんですか!?」


「まぁ……俺たちから見れば悪党だが、魔族の中で一番マシなのは、快楽だけを食べる魔族だな。

人としては酷い目に合うが、拷問されたり、嬲り殺しにされたりしないだけ扱いが良い。

いざとなったら、そういう魔族や、魔族が生み出した魔物のテリトリーに逃げて、捕虜になるのがオススメだ」


「魔物って、魔族の手下なんですね。

つまり小悪党!」


「うむ」


「じゃ、あの魔物はどういう魔族の手下なんです?」


白真珠の小さな手が、進路上を指し示した。

平原の中に、不自然な感じに木が立っている。

木は種子を動物に運ばせて、どんどん森を広げる生存戦略を取っている生物だから、草原に1本だけ不自然に生えているのは違和感があった。

よく見たら、木の幹に小さな目があり、それがこちらを凝視している。


「あれは……飢餓の魔族が作り出した『トレント・スターブ』だな。

獲物を枝で捕獲して、可能な限り飢えさせて、死なないように栄養をプレゼントしてくる厄介すぎる奴だ。

主に森に生息している」


「よぉーし!悪党は滅びえちゃえー!」


白真珠が窓ガラスを開けて、自動小銃をトレント・スターブに向けた。

引き金を一回引く度に、3発の銃弾が飛び、硬い植物細胞の表面を抉る。

……十歳児が銃火器を持っていると……ここがアフリカの紛争地帯みたいに思えてくるな……。


「……もちろん植物の細胞は硬いから、お前がもっているような銃弾は通用し辛い。

倒したいなら火炎放射器の方がマシだな」


「うううっ……悪党なのに素直に倒されてくれませんっ……」


「だが、構造上ゆっくりとしか移動できないから発見さえすれば倒すのは容易だ……誘導弾(イヴァル)!」


車両の前方に、誘導性能を極端に高めた魔力の弾丸が生成され、一直線にトレント・スターブの元へと飛んでいく。

本来なら、複数の弾丸を射出して、低い誘導技能を数で補う魔法だが、俺は逆に誘導性能を極端に強化した。

弾丸は一発しか生成しないが呪文は不要。

威力も最小限しかないが、生物には弱点が存在する。

魔力の弾丸が柔らかい目を直撃し貫き、そのままトレント・スターブ内部にある脳みそを破壊した。

外部に露出した臓器である目は鍛えられない。

食の神クッキングマスターが、トレント・スターブの身体と交換に、ゴールドアップル10個を場に残した。

白真珠は俺の凄さに感動したのか、両手を組んで――


「い、一撃で倒すなんて……魔法って凄い!

魔法ってこんなに便利で経済的なんですね!」


俺じゃなくて……魔法を褒められた。

まぁいいか、俺はロリコンではない。

銀髪ロリがどんなに可愛くても、オッパイが大きくてチャーミングでも、恋愛の対象外なのだ。

俺はゴールドアップルの隣で車を止めて、黄金色のリンゴ達を回収する。


「トレント・スターブを発見した褒美だ」


そのうちの二つを白真珠にくれてやった。


「これ食べると元気が出るんですよね……」


彼女は大喜びで齧って、その美味しさを堪能した。

その食べ方には、ドングリを齧るリスみたいな小動物のような可愛さがある。

ゆっくりとゴールドアップルを咀嚼し、ジューシーな甘みを味わい、満面の笑みで幼い青春を謳歌していた。

……あんまり役に立ってないが、魔法の鞄は魔力の高さに応じて、収納できる重量が変わるから、これはそのお駄賃だ。

荷物を大量に運搬できるという事は、都市の外でも便利に過ごせる事を意味する。

決して、小動物のような可愛さに負けたとか、癒されたとか、そういう事ではないのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


●無駄にに大量にある魔法設定だよ!


誘導弾(イヴァル)


名前は、ケルト神話のアッサルの槍が由来。


本来は軽い誘導性能を持つ弾丸を複数生成して射出するが、主人公さんは改造して、誘導性能を極端に高めて無詠唱にした。

逆に誘導性能を低くして、威力を強化して壁を壊したりと、応用の幅が広い。


「命中率は、弾数を補うという事を知らないのか!馬鹿どもめっ!」


中・近距離戦用。


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●(ノ゜ω゜)(ノ゜ω゜)先生ー!

魔法の設定なんて見ても、設定中毒者しか喜ばないぞー!



★(´・ω・`)魔法を改造して戦うお話さんじゃし。


●(ノ゜ω゜)(ノ゜ω゜)じゃ、この誘導弾は他に使い道があるので?


★(´・ω・`)誘導機能、ほかの魔法にも付けたら素敵じゃのう?

弱点狙いで、単体戦では使い勝手がええのう。


●(ノ゜ω゜)(ノ゜ω゜)そ、そんな事したら、誘導魔法ばっかりになるでしょ!?


★(´・ω・`)じゃから、誘導性能以外は全部犠牲になって、威力が超低いとか、そんな設定にした。

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