第5話 僕の召喚獣

 あれから六日たった。あの事がきっかけで僕と召喚獣の間には溝ができてしまった。


 僕は自由時間に廊下を歩きながら物思いにふけていた。

 召喚獣は頭に乗らなくなって少しの距離をあけて飛行している。

 本当は召喚獣との距離はこんな感じが一般的だ。

 召喚獣との主従関係をはっきりするべきというのが当たり前なのだ。

 だからこれで――。



 これで、本当にいいの?

 よくないけど、どうしたらいいのかわからなかった。

 どうすればいいのだろうか。


 首にかけていた布袋に入っている魔石が熱を持ち振動している。

 そこから何かが伝わってくる。

 ――そういえば僕はいつも受け身だった事が思い浮かんだ。自分から行動した事がない。

 僕から進むべきだ。 自然にそう思った。

 振り向くと後ろからついてきている召喚獣が不思議そうに見ている。

 そっと下から両手でぷにっとしている体をつつみこんだ

「ちょっとごめんね。中庭を散歩しようか 」

 抱きかかえると召喚獣は困惑しつつもおとなしく収まっていた。



 中庭には誰もいなかった。

 広い中庭には適度の木々と花壇には花が植えられており近くに噴水があった。

 噴水の枠に召喚獣を抱えながら腰掛ける。

 深呼吸をする。よし。

「僕はこの学校から二つの領地を越えたところにある町で生まれ育ったんだ」

 僕が突然語り出しても召喚獣は黙って聞いているようだった。

「その町で子どもの中で一番強い子どもがいたんだ。僕はそいつに命令された事は何でも聞いていた。そうしないと嫌がらせをされるんだ 」

「僕は強い人に弱いんだ。こんなやつがマスターでごめん。でも、強くなるから」

 召喚獣は沈黙を守ったままだった。

 そっと優しく召喚獣の頭をなでる。

 風で葉っぱがこすれ合う音だけの静かな空間がそこにはあった。


 それは突然壊れる。

「まだ、仲良しごっこしてんのかよ。ばっかじゃねーの」

 声だけで誰だかわかった。無意識のうちに体が硬くなる。僕の召喚獣を傷つけたあの人だ。

 あれからすれ違うたびに見下し、罵倒してきていた男子生徒が近寄ってきた。

 その男子生徒は近寄ってきた時に芝に混じり咲いていた小さな花を踏んづけた。

 小さな花を踏んだ事に気づかず、彼は近くまできた。踏まれた花はつぶれてしまっていた。


  今度は間違えないようにしないと、僕が召喚獣を守るんだ。

 どうすれば守りきれるのかわからない、でもやらなくちゃいけないんだ。

 だって、大切な僕の召喚獣だ。僕の一生のパートナーなんだ。

 怖いし痛いのも嫌だけど、もう後悔はしたくない。

 僕が踏まれた花のようにぼろぼろになってもやりきらなくちゃいけないんだ。

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