灰色の墓守り

十二月鼠

第1話 灰色の墓守り


灰色の墓守り、お前はそこから動けない


絶えず灰色のモヤがかるこの場所から、お前は抜け出すことができないのだ



愛 というものは ガラスの箱にはいっている


わたしはそれを時々、心の中からとり出しては みつめる


ガラスの向こうは きらきらとして あたたかい、ぬくもりの世界だ


まるで、灰色の世界のにんげんすら受け入れてくれるのかもしれないと、


勘違いするほどだ



思わず、わたしは 何度も 手を伸ばした


その度に ガラスはただの冷たい塊にもどり、むこう側の、きらきらとした風景も


息を ひそめるのだ



やがていつしか、わたしは理解した


わたしが触れたなら、その世界は消えてしまう その中の、美しい物語も



だから今日も、こうしてガラスの外から人々のしあわせを見つめ 心をあたためる


この世には 、『愛』 というおとぎ話がどこかで本当に存在しているのだと



灰色の墓守り もう自分の場所にかえりなさい


こうして、二度と手に入らぬものを見つめつづけるよりも



わたしは、灰色の墓守り 誰もこない、何も起こらないこの場所で、何かを探している


わたしの毎日は、灰色で、しあわせだ



『愛』 というおとぎ話を追いかけない限り








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る