第2話 序章 ~ラウェイに降臨した男~ 2
ここで、ボサボサの男は略式の為「ボサ男」とさせて頂く。
日本の
そのリングの上で二人は睨み見つめ合い、お互いの目を離さなかった。しかし、お互いに眼は敵の顔では無く、敵の
二人は舞踏会で舞うかの様に円を
その前蹴りは乱暴な様に見えて、足先の
ボサ男は自身の鍛え込まれた腹筋のお陰で、苦しい事は苦しいがどうって事は無い位で済んでいる。
しかし、一般人がソレを蹴り刺されたら、確実に水月は破裂し、一刻を争う状態となり死ぬ。
更にウェイは、右ストレート、左右のフック連打をボサ男の顔面に撃ち込み、追い込みの左肘の肉斬り
ボサ男の顔面は、自身の多量の流血により紅く染まっていた。
ウェイは、ここぞとばかりに攻める筈であったが、一歩引いてしまった。
ソレは、深紅が支配しているボサ男の顔ー表情を見た時に何かおぞましいモノを感じたからだ。
ボサ男は微笑んでいた。狂気を交えた微笑みだ。
普通なら、こういった苦境的な状況の場合、追い詰められた獣が
もう止めてくれと言う、今にも泣き出しそうで媚びた表情。
大きく唇を吊り上げ、白い歯を剥き出しに笑みを浮かべる表情もあるが、ソレは被撃者の緊急事態に様々な脳内麻薬が出ている状態で、大体が危ない状態である。
ボサ男のは、そうじゃなかった。
安らかな時を過ごす時の様な微笑み。余裕もあり正常な時の微笑みだった。
その微笑みに、多量の流血による
その微笑みにウェイは戸惑い、呆気に囚われて、両腕のガードが下がり開いていた。
そしてソコからウェイの顔面に、ボサ男が弓を引く様に右腕を引いた状態から思い切り右パンチを撃ち込んだ。
ストレートともフックとも言えないパンチ。このパンチは、一応
プロレスで使われる「ナックル・アロー」と言う技術だ。
日本のプロレスで、一番有名であり知らない人はいないで有ろう高名なプロレスラーの真の必殺技とも呼ばれる技術だ。
だが、
何故なら、隙が
ソレをウェイに隙が出来ていたとは言え、ボサ男はウェイの鼻と
ウェイが顔を下にうつ向かせつつも、両腕で顔面に壁を作った。
ボサ男はソレに対し、有ろう事か頭突きを鍛え抜かれた両腕のガードに見舞う。
その頭突きは、ウェイの右拳の骨を砕いた。
あの時、ウェイが右ストレートを撃ち込んだ際、ボサ男がその右拳を額で受け止めたのだ。その際にウェイの右
ボサ男はソレを狙って頭突きを敢行したのだ。
剰りの激痛に、ウェイは完全に下を向いてしまった。そこにボサ男が歩み出し、右腕でウェイの首を巻き付け、左腕でウェイの右腕の上腕部を抱え込んだ。
ギュ、ギュ、ミリ、ミリ、ギュ、ギュ、ミリ、ミリっと肉と骨が絞められる音とも取れる感触が、ボサ男の身体に伝わって来る。
ウェイは必死に引き剥がそうと、自身の身体を振ったり、ボサ男の身体を殴ったり蹴ったりしているが、息が苦しく思う様に力が入らず、ボサ男の万力から逃れられない。
ボサ男はフロントチョークを絞め続けながら右足でウェイの左膝裏を引っ掛け払う。ソレは柔道の膝車の様だが、柔道では首を極めながらの投げは、当然反則である。
しかし、ソレではせっかく極めたフロントチョークが外れる形になるのだが、ボサ男は膝車を極めると同時に、フロントチョークを極めるのはそのままに自らも身体を回転させながら飛び落ちる。
グギ、グギ、グギ、ブチ、ブチ、ブツンと言う、肉とスジを無理矢理引っ張り切る様な嫌悪を感じる小さな音がボサ男の耳に入った。
ソレと同時に薄汚れたマットの上に、蛇の様に絡み合った二つの
そして、ボサ男は静かに起き上がった。
一方、ウェイは顔が有らぬ方向を向き、白目を剥かせながら、口から
ボサ男は、痙攣をしているウェイに対し、上から視ながら微笑みを送る
そして、
陰日向ニ磨獣ト化ス 本間章裕 @giraffa_honma
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