侵略の寿司
@lenus
第1話
もはや人類は絶滅の危機に瀕していた。数年前、食卓に音もなく忍び寄った宇宙寿司によって人類の大半は寿司人間と化してしまった。人類が寿司の侵略に気付いたとき、70億いた人口はすでに半分以下にまで減っており、残された人類は都市を捨て少人数のコロニーを形成し寿司汚染の危険性が少ない食料を自給する生活を余儀なくされた。だがそれも昨日までのことであり調査の結果、沼田の暮らす土浦以外のコロニーはもはや存在していなかった。
「…それでは、対策議会を始める」
市長の声を皮切りに益体もない無意味な議論が進み時間だけが無為にすぎていく。
「冗長なことをしている場合ですか?前から言っているようにつくば市を全力で奪還しJAXAで開発された新技術で宇宙にいる寿司キングを暗殺し、絶対服従を解くのが解決への最善手に違いありません」
あまりにも形式的な議会の進行に沼田は突然叫んだ。一瞬の静寂の後、沼田に同調する囁き声がさざ波のように広がる。同じことを一体何カ月続けるのか…
「しかし、それは寿司人間とは言え人権問題に…」
「今更人権も何もないでしょう!」
そしてここ数カ月のいつも通りの返事を返す市長に沼田は怒りをぶつける。議長はびくりと体を震わせると沼田から目をそらした。データはもはや一刻の猶予もないことを告げている。
「では、君が指揮をとるということで、えー、採決を取ろうと思う」
提案を始めて10か月。ここにきてまだ採決などというのは最早お笑い種ではあるがあと少しの辛抱である。流石の市長も状況は理解しているのは不幸中の幸いだ。願わくば、もう少し早めに決断してもらいたかったがこの男にそれを要求するのは酷というものだろう。
「では諸君、つくば市奪還に向けた作戦を説明する」
市長のいう選び抜かれた精鋭という名ばかりの志願者を前に沼田は怒りに体を震わせながら声を張り上げた。人類の未来を背負った沼田の反撃は始まったばかりであった。
侵略の寿司 @lenus
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。侵略の寿司の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます