第356話歎異抄 一念に八十億劫の重罪を滅すと信ずべしといふこと。
(原文)
一念に八十億劫の重罪を滅すと信ずべしといふこと。
この条 は、十悪・五逆の罪人、日ごろ念仏を申さずして、命終のとき、は じめて善知識のをしへにて、一念申せば八十億劫の罪を滅し、十念 申せば、十八十億劫の重罪を滅して往生すといへり。
これは十悪・ 五逆の軽重をしらせんがために、一念・十念といへるか、滅罪の利 益なり。いまだわれらが信ずるところにおよばず。
(意訳)
念仏を一度唱えれば、未来に渡って極めて長い間迷い苦しむような重罪を滅することが出来ると信じるべきである、という考え方があります。
さて、この考え方は、十悪や五逆の罪を犯した人で、日々念仏をすることがなくても、臨終の時に初めて念仏を教える人に会い、その教えにしたがって一度念仏すれば八十億劫、十回念仏すればその十倍の罪を滅することが出来ると言うようです。
これは、一回とか十回という数字で、十悪とか五逆が重罪であることを知らしめるがためなのだと思います。
とても、我々が信じる教えではありません。
※八十億劫の重罪:極めて長い時間、迷い苦しむべき重罪。
※十悪:殺生、偸盗(盗み)、邪淫、妄語、両舌、悪口、綺語(うそを言って言葉を飾ること)、貪欲、瞋恚(自分の意に沿わないものを怒り、憎む)、愚痴。
※五逆:殺父、殺母、殺阿羅漢、破和合僧、出仏身血。
念仏は滅罪のための手段や道具ではない。
念仏を滅罪のための手段として用いるとか、それによって、どんな重罪を犯してもよいわけではない。
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