秘密のシェアハウス。
喜多来礼
第1話・始業式は予想外だらけ。
「それでは只今より始業式を始めます。起立、れ」
バン!
「本っ当あり得ない!髪ぐしゃぐしゃじゃない!」
崩れた髪を手ぐしで整え、隣を歩く幼馴染みに文句を言う。
私は、浅雛 華恋〈アサヒナ カレン〉。高校3年生。
「あ?文句あんなら歩いて行けば良かっただろ」
だらしなく両手をポケットに入れて、私を見下ろすこの男は、幼馴染みでイトコの如月 歩輝〈キサラギ イブキ〉。同じく3年生。
私より10cm以上も、身長の高い歩輝は、自然と私を見下ろす形になる。
これでも私は168cmある。
そんな私よりバカデカい歩輝。
キリ長い瞳、筋の通った鼻、薄い唇、綺麗な銀色に染られた髪は、肩にかかるくらい長く右側の髪を、耳にかけて編みこんでいる。
左耳には数え切れない程のピアスがあり、右耳には銀色の石が付いたピアスを、一つだけ付けている。
認めたくないけど、そこら辺の男子よりイケメンだ。
「歩輝がスピード落とせばよかった話でしょ?」
「お前が遅刻したくねーつったんだろ」
歩輝が睨む様に私を見下ろす。
別に睨まれた訳ではない。ただ目付きが悪いだけ。
「だからってあんなにスピード出す必要無かったでしょ?そもそも歩輝が寝坊しなきゃ良かったのよ」
歩輝が寝坊したせいで私達は、遅刻ギリギリに登校してしまった。
間に合ったからそれは許す。
スピードを上げたせいで、警察に追いかけ回されたことは許せない!
なんとか撒いたけどもし、捕まっていたらどうするつもりだったのよ!
「お前だって起きてなかっただろう」
「起きてたわよ!女子は時間がかかるのよ!」
「あ?知らねーよ」
注目を浴びている事に気づかずに、騒いでいる私達の前に、ハゲ担任が立ちはだかった。
「オイコラ。お前ら遅刻したくせに全校生徒の前で痴話喧嘩か?」
は?このハゲ何言ってんの。
「はぁ?何言ってんだ?あり得ねー」
「やだな先生。頭だけじゃなくて目まで悪くなったんですか?若いのに大変ですね。オススメの美容院と眼科紹介しましょうか?」
歩輝が否定をし、私は先生に倍にして言い返した。
もちろん先生は怒らないわけもなく顔を真っ赤にした。
「コレはスキンヘッドだ!ハゲてんじゃねーよ!!むしろお前らのせいでガチでハゲそうだわ!」
「大変だな」
「大変ですね」
歩輝と声を揃え哀れんだ顔を担任に向けた。
「他人事みたいに言うな!!はぁ。もういいお前らと話してると疲れる。さっさと座れ」
先生が呆れながら私達の席を指さした。
「へーい」
歩輝が適当に返事をしその後を黙って付いていく。
「まだ居たんだ。あの人ら」
「見た目だけで直ぐ分かるよね」
「本っ当朝から迷惑」
私と歩輝を見てコソコソ話しをする生徒達。
別に今に始まった事ではない。興味ないからシカト。
いちいち気にしてたらキリがないし。
私は黙って自分の席に座り、隣に座っている歩輝の肩に頭を乗せた。
「邪魔」
私はそれに反応せずに目をゆっくり閉じた。
そんな私を見て歩輝は諦めた様に、私の頭に自分の頭を乗せて眠りについた。
そんな私達を誰かが見ていたことに、気づきもしなかった。
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