知人にマシンヘッドはどう考えてもロボじゃなくて超生命体だろと言われた件(輪廻自身が言ってたように人工物です)

神仙リシ

仙人、羽人ともいう。それは魔法使いの究極の姿である。

完全に制御されたを迎えることで、より高位の存在となり、不老不死を得た聖者たち。不滅の真理を体現した者たちともいえる。神々にも近しい、人の中より生れし神霊である。

も修行を続ける彼らの力は、その年数に応じて長じていく。最古の神仙リシのひとりと言われる神農帝君しんのうていくんに至っては、古き神々、世界を形作りし偉大なる者たちに並ぶほどの力があるとすら伝えられていた。

今。

足元に星空が広がる異界で、そんな超越者たち同士の戦いが始まろうとしていた。


  ◇


山脈すらも突き崩す一撃が、振り下ろされた。

それは女武者の放った強烈なる思念。魔法そのものと化した彼女は、ただ敵を滅ぼしたいと願うだけでこれほどの事象を引き起こすのだ。

一撃だけではない。幾重にも振り下ろされた魔法は、敵手のそれと激突し合い、そしてがっしりとかみ合う。

力は互角と見えた。

いや。力で敵手の方が僅かではあるが上回っているではないか。

女武者には肉体がない。仙境は半ば異界ではあるが、ここはまだごく浅い層に過ぎぬ。物質界との境界でもあるのだ。足場たる器を確保している敵手の方が有利なのは明白であろう。

それでも、力量差はもはや埋められぬほどではない。そして女武者はひとりではない。

魔法使いたちが武装を構えあるいは、印を切り呪句を唱える。三面六臂となる者。虚空に剣で顔を刻み込む者。刃を構える者。

女武者に抑え込まれた敵手へ向け、各々が一斉に襲い掛かった。


  ◇


「無理!もう疲れた!!帰って寝る!!」

弱音を吐いているのはつり目の女である。強烈な魔法を幾度も行使しながら敵を薙ぎ払って来た彼女は既に限界が近い。

周囲では乱戦が続く。常の戦であれば双方疲労困憊で戦いは自然と収まるであろうが、敵は疲れ知らずの魔法生物。破壊されるまで動き、襲い掛かってくる。そんな敵勢を薙ぎ払うも刃こぼれが深刻であった。彼女は金物ではあっても武具ではないのだ。

その後に続く兄も疲労困憊といった有様。彼の武装は印字―――投石紐ではなく手ぬぐいで投じる石礫―――であるが、あまり役立っているとはいいがたい。そもそも彼の魔法はあまり戦闘向けではないのである。

乗騎はとうとう力尽きたために後方に残してきた。休ませればまた飛べるようにはなろうが、それも戦いに勝てばこそである。

「おい!戻ろ、な?無理やって!」

「いや―――行かなきゃ。師匠には助けが必要なんだ」

女の言葉をかたくなに拒否する兄。彼の見鬼の力が言っている。先に進まなければならぬ、と。

前に出ようとする兄を追い越し、つり目の女は腕を振り上げた。

股下から頭頂まで真っ二つとなる泥人形の兵士。

「……はぁ。しゃーないな。けどこれっきりやからな?な!?」

女に守られながら、若き魔法使いは進む。女武者の下へと。


  ◇


―――やれやれ。最悪だな。

邪仙は、今度こそ真に危機感を募らせた。まさか戦いの最中に肉体を、昇仙する者がいるとは。もちろんなり立ての神仙リシの間にはまだ実力の壁が隔たっているが、埋められる程度にまで狭まっていよう。

敵手である神仙リシ。浮遊する裸身の女仙の攻撃を。互いの魔法がぶつかり合い、結果としては何も起こらぬ。互角の魔法がぶつかり合い、打ち消し合ったのだ。この状況では大きな魔法が封じられたも同然である。

だから容赦はせぬ。

空中の敵勢へと向き直る。術の行使に取り掛かる。敵が4名に対して手が2本では足りぬ。わずかに残った足場。そこに映る多重の影をさらに何重にも増やし、それぞれの手まで用いて

手にしていた神剣が。仮にも神々の品である。持ち主の手の数に応じて増える程度の芸はある。それははた目には、虚空に浮遊する何十という剣に見えるだろう。

三方より襲い掛かる敵勢。

宙を飛翔してくる奴らと刃を交わす。今度は敵も魔法を交えてくる。

強烈な瞬撃が、激突しあった。

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