あ、しまったお盆の時期の更新どーしよう(旅行に行くんだけど更新できるか不安だ)
「……なぁ? うち、逃げたらアカン?」
「アカンでしょう、そりゃ」
「やっぱりなぁ……」
傍らにいる糸目の男にすげなく否定され、つり目の女はしゅんとなった。
そこは女武者の洞府である。その周辺に続々と集まりつつある軍勢を見て、つり目の女は武者震いを抑えることができなかった。せっかく生えそろって来た髪の毛根にも悪かろう。
ここに陣を張り、敵地へと殴り込むのだ。問題の邪仙は水に近しい性質を持ち、水を渡って移動している。移動した痕跡をたどり、河を経由すればかの者の隠れ潜む異郷へとたどり着けるのである。
やってくる者たちへと目をやる。
仙牛に乗って飛来してくる道服姿の者もいれば、雲に乗って舞い降りてくるのは水行の術者であろうか。河を下ってくる10メートル近い椀は、自在に大きさを変える椀船であろう。巨大な仙魚に跨っている者などもいる。
魔法使いの軍勢であった。彼らは普段は独立独歩であるが、こういう時の結束は固い。過去には闇の軍勢を退けるべく、平野部に広がる王国の求めに応じて兵を出したこともあるという。
しかし、よくもまあこれほど短期間に何百という魔法使いが集まったものだ。最も、相手は半神にも等しい存在である。これで安心できるか?と言われればそうではない。
兵力の中核となるのは、様々な神代の呪物である。大洞府ともなればそういった、真に力ある魔法の品物のひとつふたつ所蔵しているものだ。それらの品々があるからまだ、
等と考えていると、洞府の扉が開いた。
中から出てきたのは、甲冑を身にまとい、自らの生首を小脇に抱えた血の気のない美女。
女武者であった。彼女も出陣するのである。
自らの弟子を取り返すために。
「……お師匠様。これを」
後から続いてきた兄が、尻鞘をはめた太刀を差し出す。それを力強く受け取り、女武者は微笑んだ。
「あ、あの。俺も連れて行ってください」
「……ぅ……ぁ……」
言われて、女武者は困った顔をした。守ることはできない。死する覚悟での戦である。実際、他の魔法使いたちはみな、術の奥義を託した一番弟子たちを後に残してきている。門派が途絶えぬように。
もっとも、既に何十という弟子を祖国に残し、そして死ぬために大陸へと渡って来た女武者には門派が途絶える心配はない。
だから彼女は真剣な表情で告げた。軍勢の最後尾より来い、と。
「…ぁ……」
「はい」
そこに、つり目の女が割って入った。
「あ。じゃあうちも最後尾、ちゅーことで」
「……ぉ…」
「な、なし!今のなし!」
女武者のじと目ですごすごと引き下がるつり目の女であった。まあ仕方あるまい。彼女は前線である。女武者の足代わりとなるのだ。
やがて軍勢は集結を終え、何十人という術者が川岸へと並んだ。これより敵地への道を開くのだ。
朗々たる呪句が響き渡り、やがて河が割れた。
戦が始まるのだ。
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