村の人口に+1(村経営シミュレーションじゃあるまいし…)

神官戦士が目を覚ました時、そこは覚えのある寝床だった。

「……ここは」

裂いた木を編んだ壁。寝藁。木の床。そして、恐竜の骨を丸ごと用いた柱。

周囲を見回す。

隣に寝かされていたのは、彼と同じく寝藁をかぶせられた少年であった。穏やかな寝顔である。

「―――目を覚ましたかい」

聞き覚えのある声に岩妖精ドワーフが顔を向けると、そこにはゆったりとした衣に幅広い鉢巻を付けた初老の女。

薬師だった。

「お前さんが出て行ったあと、うちの弟子。ああ、そこの子供がね。森へ出て行くのを見たもんがおってね。後を追ってみたら二人して倒れてるじゃないのさ。まったく。運ぶのに随分と苦労したよ」

彼女の口調は呆れ半分である。神官戦士はバツが悪くなった。

「そりゃ、申し訳ない事をしたのう。よくもまぁ、弟子を傷つけた男を手当してくれたもんじゃ」

「私の仕事は人を治すことであって、見捨てることじゃあないからね」

その言葉に、神官戦士は考え込む。

「さて。

まだ、あの娘を殺したいかい?」

「……殺したいのう」

岩妖精ドワーフは、正直に答えた。命の恩人に対して嘘をつく口を持ってはおらぬ。

「……あの女は、この村で何人救った?」

「ざっと200人ってとこかねえ。村人全員だよ。何か月か前、この村を襲った霜巨人フロスト・ジャイアント6匹を、その子とあの娘が倒したのさ。ちなみにうち1匹はその子一人の手柄だよ」

そうか、と答え、神官戦士は考え込んだ。

罪は罪。それは決して消えることはない。しかし、焼き清めることはできる。

償いによって。

火神の教えであった。

「……殺したいが、お前さんたちの言い分も分かった。

しばらく、考える時間をくれんか」

「いいじゃろ。

あの娘が戻ってきてもいきなり斬りかかるんじゃないよ?」

「分かっておるわい」

苦笑した神官戦士に再び、睡魔が襲い掛かった。

意識がゆっくりと、闇に包まれていく。

やがて彼は、安らかな眠りに落ちた。

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