第二話 しーんうら

ふと思ったがボテ腹のデュラハンとかよくないですか(おい作者)

死者は苦痛を感じない。

肉体的快楽も。

どころかあらゆる生命活動と縁がなかった。肉体を突き動かすのはあくまでも偽りの生命と、その源である魔法の力である。

だから、死にぞこないアンデッドと化した者は時に驚くほど、非人間的な行動をとる。

今の姫騎士もそうだった。

雪の舞う林でのこと。

姫騎士は地面に横たわり、じっと動かずに裸身を晒していた。傍らには生首。彼女の肉体には既に雪がかなり積もっている。寒くもないし苦痛でもないのだ。何も感じないのだから。

どころか、意識しなければ死した彼女の肉体はピクリとも動かない。はた目にはただの死体と区別などつくまい。

厚い雲に覆われた夜空を見ていた。

すぐそばには倒木を組み合わせ、枝を屋根として作った避難所シェルター。中では少年が眠りに就いている。

あの地下迷宮ダンジョンから脱出した後の事。

奴隷だった少年と姫騎士は、旅の途上にあった。

地下迷宮を陥落させた当時、すぐそばには人の類の軍勢が迫っていた。少年だけならば彼らに救いを求めるという選択肢もあっただろう。しかし姫騎士は違う。彼女は化け物だった。それも、幾多の人の生命を奪った怪物として、軍勢にも知られているはずだった。彼らの前に姿を表せばてしまう。よくて封印と言ったところだろう。せっかく自由になったというのに、それをまた失いたくはなかった。

だが、それはあくまでも彼女の事情だった。

にもかかわらず、少年は姫騎士に付き合った。幼少期に住んでいた村を焼き討ちされ、さらわれて来た彼は人間をほとんど知らない。だから他者を恐れたのである。それよりはの姫騎士と共にいることを選んだのだった。

本当にそれが正しいのか?と姫騎士は自問する。彼の将来を思えば、人里に保護してもらうべきだろう。本人がなんと言おうとも。

しかし、そうなれば彼女はひとりぼっちになってしまうのだった。だから踏み出せない。

死んでいると何事にも臆病になるものだな、と彼女は苦笑。重い体を起き上がらせる。寝床を作らねばならなかった。

手刀が、土へと突き込まれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る