骸骨のマリアは死を謳う

幽谷澪埼〔Yukoku Reiki〕

第一話

──貴方に叶えたい願いはありますか?

──貴方に大切な人は居ますか?

──貴方に宝物はありますか?

──貴方に好きなものはありますか?

──貴方に苦手なものはありますか?

──貴方に嫌いなものはありますか?


骸骨のマリアはいつも問う。不思議でたまらない。なぜ人はそうやって大切に大事に扱う事が出来るのだろう? なぜ人は同族を傷付けるのだろう?

──なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ???


いつまで経っても解らない。理解出来ない。訳が解らない。全く…………人とは理解し難い生き物だ。


にゃぉぉぉん

足元で愛猫で相棒の曜鈺ようぎょくが啼き、身体を剃り寄せてくる。

『そろそろ仕事の時間にゃあ?』

頭に心地良い音程の声が響く。これは紛れも無く愛猫曜鈺の声だ。

曜鈺の身体を撫でながら答える。

「解ってるよ、今日は誰かな?」

『今日はニホンのトウキョウって所にゃ〜』

「トウキョウかぁ……彼処ってまだ人居たんだ?」

『最近になってやっと少し人口が減ってきたにゃんよ? それでも多いにゃんけど……』

「ははじゃあ暫くは居なくならないね」

傍から見たら黒猫を撫でながら愚痴を零している不思議な少年にしか見えないだろう。

──…………………実際は仕事の話をしているのだが。



──此処は魂の漂着点。死神と死者が集まる所。その名を『霊着界ソウルシティ』という。

コレはそこに住む謳姫死神マリアが紡ぐ今宵の余興劇。

さぁ今宵は誰の魂が迎え入れられるのか──?

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